算命学余話 #R29

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算命学余話 #R29 (page 1)

 前回の余話は家系をテーマにとり上げてみましたが、想像以上に多くの読者を獲得し、関心の高さが伺えました。筆者は後継ぎでない東京人なので、家系など顧みずに長年暮らしてきましたが、世の中は自分のような人間ばかりではないことを今回思い知りました。算命学の家系論は膨大なのでとても余話で紹介しきれませんが、この通り関心の高いテーマであることが知れたからには、この種の話題を少し増やしていこうかと思います。
 
 というわけで今回のテーマは養子についてです。前回の余話では、養子になると運勢が伸びる命式をひとつ例に挙げました。この一例に限らず、生家を出て養子になったり嫁いだりすると、星の消化が進んで運勢を伸ばすことのできる命式というものは幾つかあります。また養子となって他家を継ぐのではなく、自分自身が初代となって家系を創立する運勢というものもありますし、逆に家系の存続とは真っ向対立してその人一代限りの巨星となる命式もあります。
 こうした命式が自然界に存在するということ自体、家系に対する価値観が多様であることが窺い知れます。日本は永らく武家社会をやってきたので、お家存続は死活問題であり、家系を存続させることが生存条件でもありました。しかし武士のいなくなった今日では、この価値観はもはや時代遅れであり、もちろんまだまだ家系を大事にしたい一族はあるでしょうが、世の中それ一色では立ち行かず、旧習から飛び出して新たな世界を創造する開拓者として生きる人もあれば、そうした新しい社会に適応して家系を省みない生き方を選ぶ人もいる。
 
 どれがいいとは算命学は語りません。算命学が善しとするのは、その人の宿命がどういう生き方すれば輝くかを知ることであり、実際に人がそのような生き方をすることです。価値観がばらけているということは、人がそれぞれの方向に向かって歩いているということなので、無駄な競争も生じません。
 武家時代は「お家大事」に多くの人が群がりすぎたので衰退したのだし、明治以降は「立身出世」に大勢が殺到したのでおかしくなったし、現代は「勝ち組」をめぐる不毛な競争とそれから落伍した鬱病患者のはびこる社会になったと考えるのならば、たった一つの価値基準に全員が殺到するという事態から我々はいい加減脱しなければならないでしょう。そのための知恵を、算命学は提示しているのです。宿命の数は、60×60×60種類もあるのです。この数を知るだけでも、一つの価値基準に全員が従うことの無意味さが知れるというものです。
 
 司馬遼太郎は著書の中で、中国や朝鮮に比べて日本は養子で家系を存続させ、成功してきたと指摘しています。中国や朝鮮の支配階級は家系を重視するあまり同姓(同族)結婚を認めませんし、他家から養子をとって家を継がせるという発想もなく、大きな氏族が滅びる時は社会全体が動乱期に入り、新しい氏族が天子となることでようやく社会は平穏を取り戻すという歴史の繰り返しでした。
 一方日本は天皇家でさえ、親戚とはいえ継体天皇をお迎えして「接ぎ木」しましたし、日本初の武家政権である鎌倉幕府は、創始者の源頼朝から「三代」しか続かずに北条家に「接ぎ木」されました。三百年の泰平を謳歌した江戸幕府は八代将軍を紀州の分家から養子にして「接ぎ木」し、徳川家と徳川時代の寿命を延ばしました。そして十五代将軍を再び水戸の分家から養子に迎えた時は、江戸幕府は終焉しましたが、徳川家は今も健在です。
 日本の王朝の場合はいずれも親族内から養子を選ぶので、血脈が完全に刷新されるわけではありませんが、庶民ともなると、例えば商家や芸能の家柄の場合、実力のない後継ぎを選ぶと死活問題となるため、ぼんくらな親戚の子よりも才能ある赤の他人を養子に選びます。こうした血脈に拘らない思い切った人材登用術が日本社会には普及していたので、王朝も文化も比較的安定して発展したけれども、中国や朝鮮はこの種の柔軟な接ぎ木術がないため、国家や企業は一族経営となり、無能な世継ぎが立つとこれを引きずり下ろそうと血みどろの権力争いが起こり、国の発展を阻む原因となったというのです。一応共産主義をやっている現在の中国は「同郷」というくくりで権力闘争を繰り広げておりますし、南北朝鮮に至ってはずばり一族経営の弊害が国民を苦しめているため、この説はなかなか説得力があります。
 
 算命学の考えでは、養子は決して悪いものではありません。何を継ぐかを考えた時、血脈は必ずしも重視されないことは前回余話で述べました。そして「何かを継ぐ」役割を担った養子命式ともいうべき宿命は、いくつか認められています。今回はそうした養子の役割について、命式の意味の根拠を辿りながら考察してみます。
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