算命学余話 #R6

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算命学余話 #R6 (page 1 )

 先日、宇宙や生命の起源を専門とする科学者が興味深いことを述べていました。それまで講義してきた自然科学の話から突然歴史の話に飛んだと思ったら、人類が滅びる原因について論じ始めたのです。
 その見解によれば、欧州文明の原型であるローマ帝国が滅んだ原因は外国によって攻められたからではなく、帝国内部の享楽が嵩じて「虚業」が蔓延したからだというのです。虚業というのは聴き慣れませんが、反対語は実業で、実業とは農業・漁業といった第一次産業や建築業、流通業、工業等のことです。つまり人間が生存するのに不可欠な衣食住を賄う業種が実業であり、逆に不可欠ではない業種が虚業というわけです。
 虚業は具体的にはスポーツや芸能のことであり、衣食の足りた成熟社会における享楽と結びついていますが、社会が発展すればするほど実業に対する敬意が損なわれ、相対的に華美な虚業が尊重されるようになる。衣食の足りた子供たちはきらびやかな虚業に憧れて実業を省みず、社会は虚業を営む人間ばかりとなり、結果的に衣食が足りなくなることで国は亡びるのだ、というのがこの科学者の意見です。実に興味深い亡国論です。算命学は陰陽論が土台ですから、このような虚実二元論は得意とするところです。この科学者は更に組織の寿命についても歴史的経緯から自論を展開しているので、もう少し引用してみましょう。
 
 組織の寿命は90年であるという説があるそうです。これは人間一世代を30年と考えて組み上げたもので、30年毎に世代交代を余儀なくされる人類というのは、まず初代が苦労をして実業で身を立てる。食えるだけの余裕がなければ子孫を残せませんから(寿の話をしています)、二代目に繋ぐにはまず実業が基盤であるはずだというわけです。
 そして首尾よく二代目に世代交代がなされると、その二代目は初代の苦労を見て育っているので、生活水準や教育レベルは上がってはいるものの実業を重視しており、引き続き実業の担い手となる。
 しかし三代目ともなると既に初代の苦労を見ておらず、生まれた時から実家は裕福であり、何の疑問もなく高等教育を授かるようになる。誰もが甘受している学業というものに有難みを感じることはなく、大学はただ通うだけのレジャーとなり、レジャーを煽る社会には虚業が溢れ、三代目はこれに憧れて先代が築いた財産を食い潰し、実業をおろそかにすることで自ら組織を滅ぼすこととなる。
 
 三代目が自分の代で組織を潰さずに四代目に引き継ぐことがいかに難しい作業であるかということは、以前余話で述べた通りです。奇しくもこの科学者の認める組織寿命論と一致しましたが、日本人である科学者は更に、こうした普遍的な人間の行動パターンから日本の未来を以下のように予測しています。
 日本は明治維新から終戦までがこの三世代に該当している。初代である明治人は近代化の波に乗って実業を社会に根付かせ、二代目に当たる世代がこれを継承して国力を増強、欧米列強と肩を並べたが、三代目は実業をおろそかにして戦争の旨みへと傾倒し、結果的に国家を滅亡寸前まで追い込み、組織たる国体は90年を経ずして崩壊、変質を余儀なくされた。終戦後は社会が一変したのでまた初代が始まり、焼け野原から復興を果たした日本が経済大国となったのが1970年代の二代目の功績であり、現在はこの二代目の蓄えを食い潰す三代目に入っている。だとすればこの国家組織なりシステムなりは、あと20年足らずの寿命ということになる。
 
 科学者は悲観主義者ではなく、日本なり人類なりの平和的存続を願っているので、人類の歴史パターンに従ってあと20年に迫った滅亡(どういう規模かは判りませんが)を避けたいならば、現在のような大量消費をもてはやす浪費社会システムと決別し、持続可能な次の社会システムに速やかに移行すべきだと警告しています。
 これまた奇しくも以前余話で取り上げた話題と一致しましたが、算命学の観点から見ても、現在は財を頂点とする土性偏重の社会なので、ぼちぼちこれは終了して次の金性、つまり名誉と奉仕の社会へと移行するのが自然です。この自然の流れに逆らって財に固執する者は早晩淘汰されるでしょうし、固執すればするほど土性から金性へのハードルは高くそびえて、四代目へのバトンタッチを困難にするでしょう。
 あと20年といえば2036年、戦後90年とするなら2035年がこの境界です。このハードルに直面するまでに、我々は初代と二代目が築いた富と知恵を食い潰すのをやめて、実業を取り戻さなければならないようです。果たしてできるでしょうか。
 
 虚業と実業の話は算命学のカバーする領域なので話は尽きませんから、また別の機会に改めて論じることにして、今回の余話のテーマは虚と実に少し関連する形で、陰陽についての考察を十大主星にからめて進めてみます。
十大主星の陰陽といえば、貫索星が陽星で石門星が陰星で…という一般論をまず思い浮かべますが、今回はその話ではなく、より高度でややこしい話です。十大主星は周知の通り陽占のアイテムですが、では陰占とは全く別物なのでしょうか。
 とんでもない。陰占とは切っても切れない密接な関係性があり、だからこそややこしいのです。それなのに陰占と陽占は往々にして別物のように論じられるのはどうしてか、ということについて、やや専門的で、華やかではない地味なお話をします。
 地味ではありますが、実のある話です。前回の余話は鳳閣星を論じましたが、対になる調舒星を論じる前に、是非とも語っておきたい話なのです。なぜなら鳳閣星は伝達の実を、調舒星は伝達の虚を暗示しているからです。
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