小説の未来(20)

 おそらく、学生の皆さんは、”法学、経済学は社会に出て役に立つが、文学は何の役にも立たない”と思われているのではないでしょうか?さらには、もはやAIの時代では、文学部は必要ないと思われているようでもあります。

 

 あくまでも個人的な意見ですが、社会に出て、文学ほど役に立つものはないと思っています。確かに、処世術的な面でいえば、多少は、法学、経済学は役立つように思えます。

 

 でも、生きるうえでは、法学的、経済学的な技術などは、ほんの少し役に立つという程度なのです。生きるということは、娯楽を求めると述べましたが、同時に、悩むということでもあるのです。

 

 恋愛の悩み、学校での友達関係の悩み、職場での同僚関係の悩み、これらの心の悩みを解決するのに役立つものに、どんなアイテムがあるでしょうか?数学でしょうか?英語でしょうか?物理でしょうか?工学でしょうか?法学でしょうか?経済学でしょうか?医学でしょうか?

 

 私たちが学校で学んでいる学科が、心の悩みの解決に役立つでしょうか?多少は、役立つかもしれません。でも、心の悩みを解決するアイテムにはなってくれそうにもありません。

 

 悩んだ挙句、どうすることもできず、暴力をふるう、ひきこもる、自殺する、殺人を犯す、宗教を信じる、などの行為が出現してきます。これらの行為は、苦しみから逃れるために行う娯楽でもあるのです。 

 苦痛をいやしてくれるゲーム娯楽は、山ほどあります。でも、これらのゲーム娯楽は、快楽をもたらすがゆえに、脳にとって有害でもあるのです。現に、ネットゲーム依存症となり、思考能力が低下し、痴呆化を引き起こしています。

 

 特に、問題なのは、ゲームの内容です。人気があるゲームのほとんどは、戦争、殺人、格闘ゲームです。小さいころからこのようなネットゲームに洗脳され続けると、人間関係に必要な感情が育成されず、感情言語も十分に発達しません。

 

 では、小説を読めば、悩みは解決するのでしょうか?解決に役立つとしか言いようがありませんが、解決へのヒントをつかむのに、小説は役立つと思っています。さらに、小説を書くことは、悩みの解決に大いに役立つと言えます。私の場合がそうであったからですが、学生の方は、ぜひ、小説の創作にチャレンジしてほしいと思います。

 

 

 言語娯楽である小説のいい点は、言語中枢を刺激するだけでなく、感情神経をも活性化する点です。生きるということを考えるうえでも、生きることを享受するうえでも、感情言語で構築された小説は大いに役に立ちます。また、小説を書くことによって、自分の心を客観的に見つめる時間を与えてくれます。

 

 人は生まれながらに欲があり、欲がるからこそ、苦痛が生まれます。そして、苦痛を癒そうと娯楽を求めます。これは、死ぬまで続くのです。人は、娯楽なくして生きることはできないのです。

 

 だとすれば、人は脳に有益な娯楽を選択すればいいのです。小説娯楽は、人によっては快楽をもたらさないかもしれません。でも、小学生でも、中卒でも、科学者でも、ひきこもりでも、ホームレスでも、日雇生活者でも、チョ~大金持ちでも、大統領でも、総理大臣でも、ローマ法王でも、享受できる娯楽なのです。

 

 

春日信彦
作家:春日信彦
小説の未来(20)
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