第一章 嵐の前触れ
6月19日
モラトリ君は、千波陽子が最高であると言っているが、言動にまだ一貫性がなく、試験終了時にどう動くか、見ものである。6回も落ちて、まだ公認会計士の試験にこだわっている。
6月20日
よほど数学の基礎的なところが不足しているようです。
6月25日
また、「県庁の女」に電話攻撃されているようである。今日は長い。負けたら負けで潔く自らの負けを認めてしまえばいいんじゃないかなと思う。下手な言い訳は見苦しくっていけない。
7月6日
本日、公認会計士の試験からの撤退を内定したと会見。
7月7日
モラトリ君は現金で、もう監査論を捨てて、今日は商法などをしている。蝉も、二、三日前から、鳴き出した。今日は本格的に鳴いている。梅雨も明けたんじゃないだろうか。
積み上げられた本を見て、そうしきりに思い出したように言う。
「多額の支出は無駄だった」
ひどく嘆いている。
7月10日
午前11時10分頃出かけた。扉の閉め方からすると、怒っているようであった。ばたんと大きな音がした。よく検討してみないとわからないが、あんなに単純にして、行動派の人に会計士が適合しているかどうか疑問である。
陽子君の東京土産だと言って、雷おこしを少し持ってくる。大得意だった。
会見の内容要約
「公認会計士試験から撤退して、税理士に5年でなり、独立開業にめどを立てる。来年、千波陽子と結婚する。または、再来年。千波さんが公認会計士の試験から撤退なら、税理士のテストに来年合格する」と断言した。
7月11日
よくその県民性を表している。
第二章 テスト前
7月14日
久しぶりの「電話攻撃」、対応に苦慮、弱気である。私の予想は当たるのです。また彼は、荒れるだろう。千波さん案での一本化も外因により厳しいとみられる。
彼、元気なくなる。電話に原因ありと見た。
「今日は、歯医者にはいかない」という始末。この戦争はまだ続くだろう。そう簡単には終わらない。
変な女に手を出してしまった自業自得というものです。現状では、決定的に勝てない状況が確立している。これではいけない。二重に勝てない。そして、自分の本心にも勝てない。悪行は、招かざる手を持って返ってくる。無駄な行為と知りたまえ。過去には、いい気になっていられた時期もあったでしょう。その報いである。
戦後処理の方法を誤った日本のようなものになってしまう。被害者が加害者になってしまう。まだ若いね。真の方針と方向が決定されていればこういうことにはならない。がんですね。治癒するには多少時間がかかる。それでも、買い物に行く元気があるのだから、大したものである。
7月15日
夜にもビールを飲み、そして、第二部屋にテレビを移動。勉強の名のもとに何を行っているのでしょう。
彼は現金である。試験勉強とは関係がないコピーに出かける。午後9時53分。えらくいい気分のようである。行動が速いので、すぐに動く。
20分経って帰ってきた。
「先客が、本1冊コピーしていた」といって、怒って帰ってきた。
「予定が狂った。あぁーあ」とも言う。
意思決定が良くできていない。問題もあってないようなものであるのに、なんだかわからない。ひどい気温、高温のためでもありますが、それだけのせいにしてはならない。しかし、口笛の一つも吹いて気楽なものである。滅亡の日も、年貢を納める日も近いのに何が原因かを突き止められないままに時間だけが過ぎている。
7月18日
「負けるのは嫌」と言っている。
何とかしなければと焦っている。
7月19日
夜になると勉強は全くせずに、横になっている。ビールの量も増えている。どうだろうか、試験の結果は。
まったくいかれている。しかし、観察する限りでは、何もかもを解決せずにそのまま上乗せするから、そうなっているようにしか見えない。問題の解決には、よほどの努力が必要だろう。
今日切れまくった。何の理由からか、何の気分からか、コンパクト・ディスクを2枚も借りてきた。狂ったとしか言いようがないが、30分もしたら、死んだように眠っていた。
7月22日
朝一番、千波さんが文教スクールをやめたとのニュースが飛び込んできた。モラトリ君に動揺が走る。同調して動くか。
7月25日
今日試験地に向けて出発、最後の勉強をして、何やらやっている様子ではあるが、台風が来ているようでもあり、落ち着かないようだ。
「アイデンティティがどうのこうの」と言って処置なしの状態。試験に不合格なら、確実にアイデンティティは崩壊する。過去からの分離・他者からの孤立、自我同一性の拡散・混乱。まあ、根こそぎ感で済みそうです。しかし、十分に狂っているようでもある。回復には、経験上3年は必要であると思われる。とても弱音を吐くようになった。
午後2時43分、北方荘を出発。
大きな荷物を下げて、行きました。それにしても行動が速い。すぐに出かけていきました。少し渋っているようではあったが、それでもさっと出かけていきました。すごい、尊敬する。
だから、終われば、またすぐに正しいであれ、正しくないであれ、動きを変える能力を持っているものと思われる。それが本性だな。
第三章 解放のち放蕩
7月28日
帰ってくるなり、えらくご機嫌がいいので、何か企みがあるとみられる。
7月29日
時間オーバーの昼寝をしている。
さっそく「門司の税理士」に連絡。保険屋税理士の件である。
7月30日
今日「門司の税理士」と面会。水曜日に面接の段取りのようであるが、先生本人ではなく奥さんとであるところが何やら怪しい。
7月31日
午前10時7分、下関のまだ向こうまで、海水浴に行きました。計画が死んでいなければいいのですが、試験は待ってはくれないので、計画がすでに死んでいれば、来年の合格はない。税理士に変更するなら、まだやることは先にあると思う。一つに懸けるのであれば、1年ぐらいは、万事に代えて一の大事に当たるべき。税理士の試験をなめてはいけない。同じことを繰り返すわけにはいかない。まだ遊びが多い。公認会計士もだめだったのなら、一層の自粛を必要としているはずなのに、そうとは見えない。すべてが終わっても、それからです。まだ何も始まっていないのです。したがって、どうしても計画で勝っていないと勝てない。「アリとキリギリス」の話イン北方荘。
モラトリ君は、やっぱりなぜあんなに現金なんでしょう。帰ってくるなり、花火大会に行こうとしきりに要求するから行くことにするかと思っていたら、すぐに中止にしようという。
8月1日
彼の状態は予想通りであった。
「だんだん落ちぶれている」としきりに自ら漏らす。
今日も現代会計入門の本を読んでいたが、午後4時ごろ電気治療に出かけて行った。
会計士事務所では出会いがないと漏らす。
部屋の掃除も本の横積み状態も全く手が付けられていない。本読みで行き詰まったのは、自分の性質とは異なっていることを無理してしようとするからです。行動型、本来は本読み人間ではない。
8月2日
久々の電話攻撃、防戦一方である。時間は、午後8時2分から13分と8時51分から57分。たぶんまだかかってくるものと思われる。もめるの予想は外れていなかった。以前に何か悪いことをしたに違いありません。結論に達するには、時間がかかりそうである。
死んで寝ていた。「女の電話攻撃」が効いているのでしょう。
8月23日
よくこんなところに11年もいられるなと思う。