算命学余話 #U78

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算命学余話 #U78 (page 1)

 前回の余話#U77の購読料を割高にして読者制限を図ったのは、本文に陰転陽転に係わる技法を盛り込んだことが理由です。技法自体は別段隠すほどのものでもありませんが、こうした鑑定上の技法は心の曲がった人に知られると歪んだ差別意識を煽る危険性があるので、安易な公開が憚られるのです。
 
 以前『血液型の科学』という免疫学の専門家が書いた良書を取り上げたことがありますが、そこには血液型別性格診断もまた、今日の我々が例えば気の毒なB型さんたちを気まぐれと揶揄する軽微な差別とは比較にならないほど、深刻な人種差別に使われた暗い歴史があったことを指摘しています。
 第二次大戦中のナチスドイツがユダヤ人迫害のスローガンとして打ち上げたアーリア人純血説では、血液型性格診断が人種差別の道具として使われました。その説によれば、「知識人にはA型が多く、犯罪者にはB型が多い。B型の少ない白人はB型の多いインド人に比べて「優位」であるとした。B型はサルやヒツジなど下等な動物にも多いことがこの説を妥当とした」。血液型は動物や植物にもあることは知られていましたが、サルやヒツジを取り上げてB型が下等だと断言したり(人間至上主義の実にキリスト教徒らしい発想です)、植民地政策で収奪の限りを尽くして貧困に陥れたインドに対してこういう暴言を吐いてしまう無神経さが、A型を誇る当時のドイツ知識層が母国を破滅へと導いた証左にもなっていることは、後世の我々のよく知るところであります。
 今日の欧米人が血液型性格診断に日本人ほど信憑性を感じないのは、そもそも彼らがO型に偏向した人口分布で、A型、B型、AB型の知合いをいくらも持たないから比べようがないという実質的理由もありますが、それ以上にこうしたナチス時代の痛い経験から自分たちの過ちや無神経ぶりを隠すために、差別に発展するかもしれない生まれつきの差異についての議論を過剰に忌避しているからではないでしょうか。
 
 ここで欧米人批判をしたいわけではありません。このような過ちを犯す恐れは算命学にもあるのです。「この星を持っている人はこういう悪い人間だ」とか、「特別な命式の自分はもっと高く評価されて当然だ」とか、自分だけに都合のいい考え方をする人が算命学を悪用して、他人を差別したり迫害したりする恐れは大いにあります。実際に私もそういう意見の人に遭遇するときは、大喝してその歪んだ根性を粉砕するよう努めておりますが、個別粉砕には手間ひまがかかるので、いっそのこと算命学の技法自体を秘匿した方が早いのではないかと思わないでもありません。
 とはいえ算命学は陰陽論なので、この世に歪んだ心の持ち主がいるということは、同時に同数の心の正しい人もいるわけで、こうした人々に正しい知識を知ってもらうことは大いに意義があると思い直し、そういう人たちに読んでもらうことを期待して購読料を設定しているつもりです。算命学は二千年以上前の思想で著作権はとうに切れておりますから、これに現代人が新たに値段をつけるというのも奇妙な感じがしますが、中国の歴代王朝が算命学を寡占して外部に漏らさなかったという伝説的な経歴を考える時、前述のナチスドイツのような世を惑わす悪の道具として使われることを嫌った先人が、或いは故意に隠匿した可能性も否定できません。算命学学習者には、そうした歴史についても思いを馳せながら、この旧い技術を如何に正しく使用するか、世の役に立てるかを自分なりに模索して頂きたいです。
 
 ところで、当ブログでも紹介したことのある30年越しの長編漫画『パーム』の最新刊第37巻が先ごろ発売されましたが、物語はますます恐ろしいテーマに発展し、作者・獣木野生はよもや暗殺されやしまいかと心配になるくらいです。壮大な人生観で読者を魅了してきたこの作品は、とうとう発行部数が「世界累計200万部突破」したと帯にある。世代を超えた読者の根強い支持を集めた成果です。登場人物たちの名言はあまたありますが、37巻では主要キャラであるジョゼが集団暴行監禁されていた少女時代を振り返って、淡々とこう語ります。
 
「くだらない人間に多くのものを奪われたわ。与えるならいい人間に与えたい。」
 
 実に重いセリフですが、算命学の思想を考えるヒントになるので今回はこの辺りをテーマに、『パーム』に倣って人生について思索してみます。前々回から続いた宿命消化の話の締めくくりですが、鑑定技法の話ではありません。
 
 前回の話のおさらいになりますが、陰陽を行ったり来たりして生きている人間は、陰転しているときも陽転しているときも宿命を消化しているはずであり、従って陽転だけしている状態は危険であり、陰転だけしている状態も危険です。つまり両極端に偏ることを算命学は嫌っているのです。それはまた同時に、陰転陽転だけの話ではなく、天中殺や守護神、忌神、純濁、人体図の上下左右その他諸々のステージにおいて、何か1つに偏っているのではなく適度にばらけ、流動しながらもバランスのとれている状態が良いということであります。
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