算命学余話 #U76

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算命学余話 #U76 (page 1)

 震災から間もなく四年になりますが、地域によって復興の進捗具合にばらつきがあるという報道をやっていて、進んでいる地域の取材によれば、復興計画の立案を40歳前後の若手にやらせ、年寄りの口出しを排除したのが良かったといいます。先の短い老人の意見よりも先の長い若者がどうしたいかを優先させた結果、計画がスムーズに運んだというのです。曰く「60歳以上は口出すな」、しかし知恵は出してくれ。一見ムシのいい言葉に聞こえますが、算命学の観点からはこうした老人の使い方は正しいです。
 人体図の頭部は習得本能を司り、知恵を意味します。同時に過去や祖先、親や上司を意味し、要するに過去に積み重ねた知恵が人を賢くするのであり、それを持っているのは祖先であり、親であり、総称すれば先人であり、老人ということです。知恵というのはその土地や風土に根ざしているため、余所の土地に移るとあまり用をなしません。従って知恵というのはある程度地域に密着したものなのであり、判りやすくいえばそこに住む人間が歩き回れる範囲で威力を発揮します。
 しかし現代のように車や飛行機で地球の裏側にも簡単に行けるという状態だと、地球全般に威力を発揮する先人の知恵というのがおっつかないので、その知恵はここでは役に立たないじゃないかということになって先人を軽んじる風潮が広がります。いまの世界でどの国の人からも尊敬されている人といったら、思い浮かぶのはサッカーか何かのスポーツ選手くらいです。スポーツ選手が一体どんな人類の知恵を持っているというのでしょう。現代人はリスペクトする相手を探しあぐねており、それはつまり人体図頭部すなわち知恵と習得の減退を意味し、現代人は自分が何をすべきかの指針を見失ったまま目先の利益だけに囚われて迷走を続けているというのが、算命学から見た現代社会評価になります。
 
 老人は何らかの生きる知恵を持っているので、必要な時に尋ねればいいのです。そうした尋ねる相手をどれだけ持っているかが、迷走を続ける現代人の明暗を分けます。人体図とはよく言ったもので、知恵のない人体図には頭がない。迷走する人は人体に頭がない状態なのです。だから指令が出せず、手足だけが周囲に流されてしまうのです。知恵のある人は自分で物事を判断できるので、周囲の流行や宣伝に流されません。そして流行が去ったあとでどちらの態度が正しかったかが判ります。
 とはいえすぐに結果が出ないのも知恵の特徴です。人体図の頭部に座する知恵は、時間軸では過去にあり、現代軸まで下がってくるのに時間が掛かるからです。知恵を習得して行使できるようになるまでには時間が掛かるのです。一方、現代軸を支配しているのは心臓である魅力本能と、左右の手である守備本能・攻撃本能ですから、現代社会でうるさく叫ばれている自己実現(魅力)とかイノベーション(攻撃=革新)とか「家族が大事」(守備=保守)とかいうスローガンは、まさしく現代軸の刹那主義が支配する社会を如実に表しているのです。
 
 さて前回の余話も結構な人気の回となりました。初動の話がウケたのか庚の話がウケたのか判別しかねますが、今回は少し話題を変えて宿命の消化の仕方について論じてみます。既に何度も申し上げている通り、宿命と運命は違います。宿命は生年月日のことなので変えられませんが、運命は実際にどう生きるかで変わるのです。
 私は今どきのゲームの類をやったことがないので詳しくは知りませんが、バトルゲームでは主人公が旅の途上で武器アイテムを手に入れ、どんな武器を持っているかが勝敗を左右するとかしないとか。卑近な例ではありますが算命学もこれと同じで、宿命によって手に入れられる武器というのは限られているのですが、それをどの場面で使うのか、或いは役に立たなさそうな武器はさっさと捨てて使えそうな武器だけをせっせと磨くのか、そういった判断は実生活上で日々積み重ねていかなければならないのです。これは宿命を見ただけでは判りません。どの武器で自分を磨くのかは、本人が決めて実行することなのです。
 算命学ではよく「宿命の消化」という表現をしますが、持って生まれた武器である宿命をいかに消化し、星を輝かせ、死ぬまでに燃料を使い切るか、それが人生の良し悪しだと考えています。せっかく持って生まれた才能を持ち腐れにしたり、人生に輝きがなかったり、怠けて暮らしたことで晩年寝たきりになったり、という生き方は算命学は推奨しておりません。よりよい人生を過ごすために、人間は日々努力をして宿命を順調に消化していかなければならないのです。今回はそうした消化について取り上げてみます。
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