算命学余話 #U39

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算命学余話 #U39 (page 1)

 3年程前にある美術館で中国の北方民族の貴重な発掘資料の展示があって観に行ったのだが、その時の各展示品に添えられた説明書きに「これには中国(=漢族)文化の影響がみられる」という文句が連発されていて、他の来場客はどうか知らぬが私は結構不快になった。これらの展示物を現在管理しているのは中国政府の文化庁で、中国は多民族国家といいながら実質は大多数を占める漢族の支配する国なので、中華思想の外にある文化は軒並み辺境扱いであり、もしそこに高度な文明の形跡が見られたなら、それはすべて「漢族の高度な文化が移入したお蔭」という解釈になってしまうのだ。この展示会では金や遼などのモンゴル・ツングース系の遊牧王朝の遺跡から近年発掘された調度品や埋葬品が並べられていたが、日本人の目からすると中華風にも見えればモンゴルやチベット風にも見えるし、アイヌのような雰囲気もある気がするし、仏教を信仰していたので仏具もあるがこれらは東アジア共通のグッズだし、しかし決して漢族文化だけを連想させるものではなく、それなのにこんな説明書きを堂々とつけてしまう中国政府の傲慢にも、それを鵜呑みにして和訳をつけた日本の主催者の考えなしにも、いい感情を抱けなかった。

 遊牧王朝がなぜこうした扱いを受けねばならないのかは、現在生きている彼らの子孫の数がまず少ないということもあるが、第一には彼らが当時の勢力圏に揺るがぬ文字文化を持たなかったことが挙げられる。独自の文字を持ってはいたが広く普及する前に廃れてしまった。遊牧という生活形態があまり文字を必要としないことも原因の一つだろう。文字がないと古い時代の出来事は忘れられてしまうので、結果として隣接する漢族の記録する文書を頼るしかなくなる。
 しかし漢族は漢族で自分の文化を中心に周囲を眺めているのだから、書き残す内容は当然手前味噌になる。これ自体は責められないが、それならそれで手前味噌だという前提で当時の状況を割り引いて分析するのが史家の役目だ。それをしないで平然と手前味噌な解説を展示品につけているから、何やら考えの足りない人間の手柄話を聞かされている気分になって、不快を覚えたわけである。

 しかし結局のところ、各民族文化を100%公平に認識するのは不可能のようである。文字のあるなしに拘わらず、結局人間は自分自身の生きた足場である文化や土地を基準に周囲を眺めることしかできない。多くの現地語を学んでその土地に踏み入り、現地人と何年も一緒に暮らして彼らの文化を熟知することは可能だが、それはほんの一握りの学者のやることで、我々一般人はおろか教科書を作る多くの有識者でさえも、そこまでは到底至らない。
 そうしたわけで、佐藤優などははっきりと「各国の歴史認識に相違が生じるのは当然で、これを越えて万国共通の歴史認識を打ち立てようなどとするのは空しい努力と言わざるを得ない」と語っている。昨今の日中韓の歴史認識の相違は、実のところ何ら不思議なものではなく、そもそも解決すべき問題ですらないというのが佐藤氏の見解だ。もしこれをどこか一カ国の主張を正当として共通の歴史と認識するならば、まさに金や遼などの遊牧王朝は中華文化の傍系にすぎないという結論で片づけられてしまうだろうし、人口比から言っても日本や韓国でさえ中国の辺境という扱いで確定されてしまう可能性が高い。尖閣や竹島など話題にもならないだろう。
 こう考えると遊牧王朝の展示ラベルがいかに不当なものであったかがお判り頂けると思う。しかし現代は民主主義の時代で、民主主義は結局のところ多数決で決まる世の中なのだ。そんな多数決は本当に正当か。少数の意見、もっと端的に云えば各自の意見や視点は、周囲との関係を壊さない範囲において尊重されていいのではないか。各自の意見は異なっていてこそ自然なのではないか。

 というわけで今回の余話のテーマは視座についてです。算命学は周囲との関係性を重視した運勢学ですが、陰占では左上の日干が自分自身、陽占では中央が自分自身で、それ以外は周囲の人間関係を表しています。一人を鑑定する場合にはこの自分自身を中心に見ていけばいいのですが、相性判断など相手がいる場合、誰を中心に見るかで鑑定結果が変わってきます。ましてやもっと複数の人間関係を見る場合には中心がいくつもできて、互いに矛盾した結果が出てしまい、判断に困ることがあります。
 算命学は流派によっては家系鑑定など複数の宿命の取扱いを得意とするところもあるようですが、私は家系判断の依頼は受けないことにしているので、ここでは基本的に相性判断のレベルの話までを考察しつつ論じてみたいと思います。
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