アザーワールド <第1話>

2ヶ月後、花帆と千花はセイレンになっていた。
花帆と千花は4軍訓練場に来ていた。
周りには2人と同じ服を着た人がたくさんいた。
セイレンの仕組みによると、セイレンの人々は1軍,2軍,3軍,4軍に分かれるらしく、花帆と千花はまだ入ったばかりなので4軍にあたる。
4軍は訓練生で緊急時しか戦う事が出来ない。
戦う事が許可されるのは3軍からで、3軍になるためには訓練で貯まるポイントが2000ポイントにならなければならない。
3軍になると隊というものをつくり、団体で動く事になる。
3軍以上は正隊員のため、2軍の隊に勧誘され、いきなり2軍になる事も可能である。
4軍は訓練生のため、みんな一緒の隊員服だが、3軍以上になると、自分で好きな隊員服にすることも出来る。
3軍から2軍に上がるためには隊ランク戦という隊同士の戦いをする。
実際に戦うと死んでしまうので、バーチャル世界で戦う。
バーチャルの世界でも生身の姿の時と同じ強さなため、ゲーマーが有利という事もない。
2軍から1軍に上がる時も同様で、2軍のトップの隊が1軍の1番弱い隊と戦い、2軍が勝ったらチェンジし、2軍が1軍に,1軍が2軍になる。
1軍は誰もが憧れ、目指している。
1軍はセイレンの中の上位5%以内の強さをほこる。
セイレンの説明はこんなものだろうか。
ちなみに花帆と千花は武器も握った事がないため、ポイントはまだ0だ。


「やっと憧れのセイレンになれたね!」
千花は嬉しそうに花帆に言った。
よほど嬉しいのかずっと隊員服の袖を見たり、辺りを見渡したりしていた。
「憧れてるのはスーさんでしょ」
花帆は呆れた顔で言う。
こんなに興奮している千花を初めて見た花帆は少し驚いている。
「それにしても・・・まさかアンタ達もなるなんてね・・・」
そこには、花帆と千花以外に6人の少女がいた。
「花帆達がセイレンなりたいって言うから・・・」
腕を組みながらそう言うのは少しボーイッシュでショートカットの矢野夢乃だ。
花帆達の所属しているバドミントン部の部長を務めている。
「右に同じ」
夢乃の右隣にいた中原菜月が発言する。
少しツンデレだが、数少ないツッコミ要員だ。
「私は夢乃がなるって言ったから~~」ガシ
「うわっ!」
夢乃の腕に飛び込みながら言ったのは押川和奏である。
簡単に言えば天然で不思議ちゃん。
「私は2人がなるって言ったから、やりたいなって・・・」
控えぎみに言うのは鳴瀬朱夏。
美人でおしとやかな少女でうるさい和奏とは正反対。
しっかり者でバドミントン部の副部長をしている。
「あれ?あの2人遅いね」
夢乃が辺りを見渡しながら言った。

「へ?あの2人って?」
花帆は首を傾げる。
マヌケな変な声が出たが、そこはスルーする。
「もうすぐ来ると思うよ」
朱夏がそう言ったのも束の間、噂の2人がやって来た。
走って来たせいか息切れしている。
息をととのえた1人の少女が顔の前で手を合わせて、
「ごめん!家の鍵忘れて取りに帰ってた!美咲はその道連れ!」
と言った。彼女は若松叶芽。
忘れ物が多く、そのたびに取りに帰っている。
そのためか持久力があり、長距離が得意である。
隣で息を切らし、ハァーハァー言っているのは永田美咲。
叶芽が言っていた美咲とはこの人の事だ。
叶芽が忘れ物をしたとき、いつも一緒に取りに帰る。
とても優しく、特に叶芽のお願いになると断れない。
「家の鍵ないと入れないもんね」
千花そう言って笑っている。
「ねぇ、強くなるためにはさぁ、師匠とか見つけないといけないのかな」
菜月がスマホをいじりながらそう言う。
スマホをいじりながらのため、みんな独り言と思い、スルーしかけた。
「なっちゃん、そういう事は顔上げて言ってくれないかな?スルーするとこだったから」
朱夏がスマホを持った菜月の肩に手を置いて言った。
「ごめんごめん」
そう言いながらもスマホをいじる菜月。全く反省してなさそうだ。
「師匠かぁ~。スーさんがいいなぁ~」
千花は上の空だ。
スーが師匠になった時の事を考えているのだろう。
徐々に千花の顔が緩んでいく。
「うわっ。こんなちー見たの初めて・・・」
成績優秀,スポーツ万能,しっかり者で優しい千花が妄想でにやけているところなんて見たことないのだろう。
みんな驚いている。
そんな時、階段から
「おーい、君達訓練しないのかぁ?」
と男の人の声がした。
ナンパと思った花帆達は無視。
するとその男の人は階段を下り、花帆達に近づいて来た。
花帆達は凍りつく。
(ヤバい、近づいて来たんだけど・・・。キモッ!)
その男の人が近づいて来た時のみんなの心の中はこれ。
男の人は花帆達の反応を疑問に思ったのか首を傾げる。
「なぁ、訓練しないのか?もうすぐここ閉まるぞ。やるならさっさとやれ」
どうやら男の人は忠告をしてくれたらしい。
今まで勘違いしていたのが恥ずかしかった花帆達は小さな声で
「ありがとうございます・・・」
と言った。
その男の人は笑顔で、
「おう!訓練頑張れよ!」
と言ってくれた。
青い狸
作家:青い狸
アザーワールド <第1話>
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