アザーワールド <第1話>

ゴゴゴゴゴゴ
“ゲート発生、直ちに逃げてください”
フィンガーの出てくるゲートが発生し、警報が響きわたる。
民間人は悲鳴をあげながら逃げていく。
しかし、2名逃げられなかった者がいた。
「ね・・・ねぇ、どうする?目の前にフィンガー居るんだけど!」
ある少女が叫ぶ。
この少女は主人公の高木花帆。
まさかの主人公が絶対絶命の大ピンチ。
セイレンじゃない花帆は戦う事が出来ない。
戦ったとしても瞬殺で終わってしまうだろう。
周りを見た限りセイレンは見当たらない。
「とりあえず逃げよう!」
花帆の隣にいた少女が叫ぶ。
この少女は花帆の親友で、飯島千花(いいじまちはな)。
千花はそう言ったが、フィンガーとの距離なんと3m。
けっこうな俊足じゃないかぎり逃げることは出来ないだろう。
2人ともバドミントン部だが、足が滅茶苦茶速い訳じゃない。
つまり、逃げ切る事はほぼ不可能。
2人が諦めて目を瞑ったその時・・・
スパッ!
と何かが斬れる音が。
2人が恐る恐る目を開けるとそこには、真っ二つになったフィンガーと剣を持った1人の少女が立っていた。
その少女は振り返り、2人に向かってニコッと笑った。
「怪我はありませんか?」
その少女に話しかけられてやっと2人は助かった事に気がついた。
少女は黒髪のショートカットで青色のネクタイのスーツの隊員服を着ていた。
どうやらセイレンらしい。
「ありがとうございます!」
2人は声を揃えて言った。
お礼を言われて恥ずかしかったのか少女は照れくさそうに笑った。
すると少女は誰もいない方向に向かって
「ハイドロ排除確認!」
と言った。どうやら通信相手に言ったらしい。
その後、
「2人救助。ウー、どこつれていけばいい?」
と通信相手に聞いた。
花帆達を安全な場所に避難させてくれるらしい。
「こちらです」
「あ・・・あの、名前って何て言うんですか?」
千花が控えぎみに聞いた。
聞かれると思っていなかったのか、少女はあたふたしている。
少女は決心したのかコクンと頷いて、
「和泉隊のスーです。すみません、本名は教えられません」
そう言って和泉隊のスーと名乗った少女は進行方向を向いた。
どうやら向いた方向に安全な場所があるらしい。
「行きましょう!」
2人はスーの後に付いて行った。
2ヶ月後、花帆と千花はセイレンになっていた。
花帆と千花は4軍訓練場に来ていた。
周りには2人と同じ服を着た人がたくさんいた。
セイレンの仕組みによると、セイレンの人々は1軍,2軍,3軍,4軍に分かれるらしく、花帆と千花はまだ入ったばかりなので4軍にあたる。
4軍は訓練生で緊急時しか戦う事が出来ない。
戦う事が許可されるのは3軍からで、3軍になるためには訓練で貯まるポイントが2000ポイントにならなければならない。
3軍になると隊というものをつくり、団体で動く事になる。
3軍以上は正隊員のため、2軍の隊に勧誘され、いきなり2軍になる事も可能である。
4軍は訓練生のため、みんな一緒の隊員服だが、3軍以上になると、自分で好きな隊員服にすることも出来る。
3軍から2軍に上がるためには隊ランク戦という隊同士の戦いをする。
実際に戦うと死んでしまうので、バーチャル世界で戦う。
バーチャルの世界でも生身の姿の時と同じ強さなため、ゲーマーが有利という事もない。
2軍から1軍に上がる時も同様で、2軍のトップの隊が1軍の1番弱い隊と戦い、2軍が勝ったらチェンジし、2軍が1軍に,1軍が2軍になる。
1軍は誰もが憧れ、目指している。
1軍はセイレンの中の上位5%以内の強さをほこる。
セイレンの説明はこんなものだろうか。
ちなみに花帆と千花は武器も握った事がないため、ポイントはまだ0だ。


「やっと憧れのセイレンになれたね!」
千花は嬉しそうに花帆に言った。
よほど嬉しいのかずっと隊員服の袖を見たり、辺りを見渡したりしていた。
「憧れてるのはスーさんでしょ」
花帆は呆れた顔で言う。
こんなに興奮している千花を初めて見た花帆は少し驚いている。
「それにしても・・・まさかアンタ達もなるなんてね・・・」
そこには、花帆と千花以外に6人の少女がいた。
「花帆達がセイレンなりたいって言うから・・・」
腕を組みながらそう言うのは少しボーイッシュでショートカットの矢野夢乃だ。
花帆達の所属しているバドミントン部の部長を務めている。
「右に同じ」
夢乃の右隣にいた中原菜月が発言する。
少しツンデレだが、数少ないツッコミ要員だ。
「私は夢乃がなるって言ったから~~」ガシ
「うわっ!」
夢乃の腕に飛び込みながら言ったのは押川和奏である。
簡単に言えば天然で不思議ちゃん。
「私は2人がなるって言ったから、やりたいなって・・・」
控えぎみに言うのは鳴瀬朱夏。
美人でおしとやかな少女でうるさい和奏とは正反対。
しっかり者でバドミントン部の副部長をしている。
「あれ?あの2人遅いね」
夢乃が辺りを見渡しながら言った。

青い狸
作家:青い狸
アザーワールド <第1話>
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