一団体が催し物を行おうとしていた。
デブっちょとせ〜たかノッポとチビは、床体操をするような格好で揃って歩いて出て来た。
センターで一列を作って止まる。
三ロール以外は、何もなかった。
小刻みにドラムを叩く音がする。
せ〜たかノッポが両手を出して見えない棒を掴む。
「はいっ」
真横に成り、「よっ、よっ」と掛け声を出して上に登っていく。
デブっちょも両腕を出した。
見えないポールを掴んで両足を空中で蹴って横に成って登っていった。
チビもそでをめくり、小さな腕のコブを出し、無いはずの棒を両手で握り、横に成り、空気を足で蹴って三ポールのトイレットペーパーで真横に成り、空気を蹴ってエアーこいのぼりを見せて演じた。
楽し気なオルゴールが流れる。
それは、みんなに好かれている"笑点のテーマ曲"だ。
テン テケ テケ テケ てっ てっ ピー、
テン テケ テケ テケ てっ てっ ペー
の"てっ てっ"のところで 三ロール共 空気を足で蹴ったのだった。
回りの備品達から、多く拍手を貰う。 もらう。 モラウ。 喝采の嵐であった。
欠点を乗り越えて頑張っていく姿が備品達に喝采をあびる程の感動を与えたものだと
思われた。
努力・自分を超える力・相手に伝わる感動、素晴らしい事だと思う。
みんなの中にも必ずあるんだよっ。 負けじに何回も挑戦してみようよ。 ねっ。 失敗をおそれずにさ。
8月15日のお盆頃 町内で配られた風鈴が風になびかれ、そこらじゅうで涼しげな音を奏でていた。
しかし、その鈴とは、裏腹に古びた埃のかぶった茶箪笥に昔飾られた鈴が多く整列を成して並べられていた。
ゴー、ゴゴー、ゴゴゴー、茶箪笥が揺れる、物が倒れる。 ガラス物、瀬戸物類が当たったり、落ちたりして割れる。
パリーン、バリーン、バッシャン・・・!?
床に落ちて割・れる、散・ら・ば・る。
しかし、何物かの力が加わったのか!? 掛かったのか!?・・・・・・ゴ~ンゴ~~ン・・・・・・。
散らばった物が割れた高さに浮き上がっていくと消えては、移動、再生。 浮いて、消え、移動、再生というリズムで壊れたものがリサイクル!?されていった。
八つの鈴が一線に並んだ。
各々に個性を持ち、鈴にオリジナルのカラーが煙のようにまとわり、色付いていく。
目の前を畳まれた小さな小さな傘と見えないバトントワラーが通り過ぎて行った。
鈴が幼児のバレリーナみたいに慣れないみたいにゆらゆらと踊り出す。
八つでスカートとインナーバトンで『エーデルワイス』を奏でて生活用品を癒していく。
エーデルワ〜イス、エーデルワ〜イス、低い歌声!?らしかったが、聴こえやすい天使の美声に鳴り、みんなの心に響いていった。
綺麗な指先とステップの高いジャンプで両足が浮いて開いた。
"エーデルワイス"が消え、一瞬だけ"白鳥の湖"に変わる。
ピンライトが当たる、鈴が次から、次へとジャンブし、マンガを見ているみたいに動いた。
色が変わって行き、八匹が順次に消えて行き、一匹の白鳥に成り、"白鳥の湖"を踊り始める。
着せ替え白鳥の湖を演じた。
声や動きが無い日常生活用品全品が心を打たれ、右へ→左へ←体を揺らされる。
楽しい時は、過ぎて思い出に変わっていった。
いつからか、フィナーレのジェンカが流れ出す。
テケッテ〜テ〜レ〜テレレレ〜レッレッレッ、レッツ、キス、頬寄せて、
みんなが前の相手の両肩に両手を置いていた。
右、左、前、後ろ、前、前、前、見覚えのリズム感でみんなが楽しんで踊っていった。
一人、また一人と画面から消えて行く。
もちろん、笑顔で手を振って。
昔むかし 選択され、気に入って購入。 毎日でも使っていた綺麗な絨毯。
確実に人の目を引き付けていた高額な絨毯(じゅうたん)。 人気があった。
今では、黒く成り、絨毯の毛がつぶされ、切れ、色あせて見た目も汚なくて、購入どころか、ゴミとして処理料金を取られる位にまでに成って床に敷きっぱなしに成っていた。
違う意味で目を引き付けていた。 (見るも無残な姿)
ひらひら~、ひらひら~、太った大きな色の悪い茶色っぽい蛾(が)が真っ黒い天井からゆっく~りと螺旋を描きながら、降りて来た。
床のほこりを舞わせながら、着地する。
汚ない蛾がゆらりゆらりと羽をは・ば・た・か・せ・た。
まるで溺れているかのように見えていた。
疲れたかのようにバタツキを止め、そして、またバタツカセル、その繰り返しが続いた。
そして、ついにバタツキを止めた・・・・・・力尽きたのか、命が尽きたのか!?・・・・・・。
!?・・・・・・床に静かに吸い込まれて行った。
沈んで行くのと反対に白く小さな二つの羽が中に浮いた。
透けるくらいの顔らしき物!?と両手!?両足!?が羽の周りにあった。
その動作と共に床が時間が経つごとに水面のように丸い波紋広がり、次第に変わっていった。
白と黒のパンダ状のナスカの床絵に成った。
始めは、奇妙に見えていたが、慣れるとオリジナルの可愛さがあった。
そこにバレーボール大のスケルトンの玉や野球の球、ピンポン玉、透明なビー玉・・・etcがゆっくり落ちて来ては、床に当たり、跳ねては、消えた。
玉には、文字が書いてあった。
L O V E l o v e M E d o.
ユー ノー アイ ラブ ユー.
床に文字が落ちる度に山本太郎のような超芸術的なピアノ絵画に当たり、ゆっくりしたオルゴールが流れる仕組みに成っていた。
ドリカムの『ラブ ラブ ラブ』などの愛をテーマにした空中楽譜!?が、玉が落ちる度に曲が次々と流れ続けていく。
奏でている最中 一つの玉が床を抜けた。
時間が止まる、コマ送り状態、時間がさかのぼった。
跳ねてあちらの世界から、こちらの世界に戻って来た時には、汚ない絨毯に戻っていた。
玉が空中で消え、一時の静寂な世界に戻っていた。 一粒の埃!?が天井からゆっくりと落ちて来る。
暗いクライ真夜中で、その円の一空間だけ明るかった。
夢を見ているような世界が広がっていた。
誰もが見ていて楽しめていた・・・・・・!?
よくよく見てみると丸の中には、もう一つ小さめな円があった。
二重の球にリンボウダンスをしているかのような横の輪。
内側の円の中には、縦の三重の輪があり、オシャレな牢屋みたいに、下には、タコのように七本の色の足があった。
天井から床にシャボン玉のような透明で球のような玉が部屋狭しとあちらこちらでゆっくりと降って来ていた。
高さによっても、色が変わり、音が違っていくらしい。
手元の《モグラ叩きゲーム》みたいな光にちっちゃいエイリアンが手!?を軽く添える事で球がその光に上下左右、四方八方にワープし、光と重なり、音を出した。
どんどん消えて瞬間移動してワープし、光と重なって行く。
まるで部屋内が明るいうちの稲光を思わせる感じで石原 裕次郎の"ヤクザなドラマー"を太鼓やシンバルを叩き、見えないスティックが目に見えるような勢いのあるリズム感で奏でられていた。
松任谷 由美の『春よ』も奏でていく。 リピート~再生~etc・・・。
それを今まで悪い事をやってきた汚れたドブネズミがいつからか、どこからかやって来た一匹がドンと中央であぐらをかいて見ていた。
完全に見入り、飲み込まれていた。
次第に仲間のドブネズミが何匹何匹ももフテぶてしい様相で肩を振って歩いて来ては、ドカンと座り、目を鋭くさせては、ドカンと座る。
怪しい、恐々しい奴ら達を集めていた。
しかし、見た目と違って内面は、心を清められていた。
やはり、芯から悪い奴は、いなかったようだ。
やはり、各々の判断と心の置き場所は、難しいようだ。 ・・・みんな少しずつ変わって行こうよ、まだ遅くは、ないよ、始める事は・・・。