ぜりーえっぐ -スマイル リズム-

ぜりーえっぐ -スマイル リズム- -3p-

 暑い夏 子供達や親御さん達は、折角の夏休みは、みんなで海に海水浴に行っていた。

  日頃は、御仏壇に線香を上げ、御供え物もしてあるお家だった。
  いつも同じ中央付近の木製の机上に渦巻き状の蚊取り線香が置かれていた。
  昼間は、隅の方にしまってあるのだが・・・!?

  いつのまにか、中央付近にか細い煙が立ち上がった。 下にクリアーの蚊取り線香が現れる。
  か細い煙が天井に付くと同時にクリアーの渦巻き線香は、消えて無くなった。

  一滴の雫が中空から床に向かって落ちた。
  床 寸前で輪のある土星、赤い太陽、青い地球と成り、一番最後に小さい雫が床に落ちた。

  一面が茶のクッションフロワーから、薄青い水面に換わる。
  水面に波紋が広がって行く。

  波紋が無くなる頃に別の円の波紋が無造作に水面に出来ては、消えて行った。
  水面に子供が描いたような緑っぽい太陽が現れた。

  皿を頭上に持ったカッパが水面に顔を現した。
  どことなく上から、楕円形の卵が落ちて来た。
  その卵に気を取られていると上も白い雲とUFOに変わっていた。

  上と下で卵を返すたびに歌手の由紀さおりと安田祥子のアカペラデュエット、"トルコ行進曲" のオルゴールが流れた。
  人のいない居間に癒されるトルコ行進曲が奏でられては、風に流されて外に消えて行く。
  未確認なお二人、カッパとUFOが、ず~っとピンポンを楽しんでいたのだった。

  アラームがセットされているかのように時間と共に霧のごとく自然に消えて無くなっていった。

ぜりーえっぐ -スマイル リズム- -4p-

(おれだって・・・・・・!?)
(わたしだって〜・・・・・・!?)

  こんな奴らにも心の声を傾け、聞き入れた。
  神様は・・・・・・天使達は、叶えてあげようと思った。  夢の世界を。

  疲れたように でも、きれいに成っていた。
(あなたの願い事を叶えてあげるわっ)
(えっ、ほんとう。 叶えてくれるのっ。 あなたが天使なのっ・・・!?)
 魔法の棒を指揮者みたいに振るう。

  色の付いた物や絵柄の入った物、模様の入った物は、皆 汚されて洗濯機で綺麗に洗われ、脱水され、干してあった。

  願い事は、"楽しく空を飛ぶ事"だった。
  いつもは、地面に一番近く、人間の汗を取り、汚く成り、臭く成るのが仕事。  だからストレス発散に気持ち良く、気兼ねなく、空を飛びたいと言う話だった。

  指揮棒が振られ、一緒に干してあるバスタオルの幕に囲まれ、靴下に魔法が掛けられる。
 ピヨピヨピヨ、ニャーオ、ニャ〜オ、そして最後に除夜の鐘のようにゴ〜ンとBGMが流れた。

  ピヨピヨという声に引き付けられたのか!? どこから、ともなく蛇が現れた。
  自然に羽を広げる。  しかし、それは、蛇では、なくゴールドのドラゴンだった。  ピラミッド型のジェットコースターがあるように徐々に上に上がって行く。
  そしてバスタオルの幕を襲ったのだった。

  ドラゴンが消え、バスタオルがひらひらと落ちると同時にソックスの絵柄のオルガンが空中を浮遊した。  分身して何台にも成り、そろばんの形を創り出した。

  ソックスが綺麗にアレンジされ、蝶々型に切られ、模様が付けられ、坂本龍一の癒しのビアノ曲 『エナジー・フロー』(ten ten te te te ten ten) が、流れると同時にそろばん玉 サナギ!?から自然に蝶々に変わり、四方八方に散らばって行った。  羽根の色や大きさを変えて夢の時間を楽しんで空中を舞い踊るソックスチョウが、部屋の一室にいた。

  そして綺麗に成った靴下達がすがすがしく、輝いて物干し竿に下がっているのが、天使には、見えていた。

ぜりーえっぐ -スマイル リズム- -5p-

  一団体が催し物を行おうとしていた。
  デブっちょとせ〜たかノッポとチビは、床体操をするような格好で揃って歩いて出て来た。
  センターで一列を作って止まる。

  三ロール以外は、何もなかった。
  小刻みにドラムを叩く音がする。
  せ〜たかノッポが両手を出して見えない棒を掴む。
「はいっ」
 真横に成り、「よっ、よっ」と掛け声を出して上に登っていく。

  デブっちょも両腕を出した。
  見えないポールを掴んで両足を空中で蹴って横に成って登っていった。

  チビもそでをめくり、小さな腕のコブを出し、無いはずの棒を両手で握り、横に成り、空気を足で蹴って三ポールのトイレットペーパーで真横に成り、空気を蹴ってエアーこいのぼりを見せて演じた。

  楽し気なオルゴールが流れる。
  それは、みんなに好かれている"笑点のテーマ曲"だ。
  テン テケ テケ テケ てっ てっ  ピー、
  テン テケ テケ テケ てっ てっ  ペー
の"てっ てっ"のところで 三ロール共 空気を足で蹴ったのだった。
  回りの備品達から、多く拍手を貰う。 もらう。 モラウ。 喝采の嵐であった。
 
 欠点を乗り越えて頑張っていく姿が備品達に喝采をあびる程の感動を与えたものだと
思われた。
 努力・自分を超える力・相手に伝わる感動、素晴らしい事だと思う。
 みんなの中にも必ずあるんだよっ。 負けじに何回も挑戦してみようよ。 ねっ。 失敗をおそれずにさ。 

ぜりーえっぐ -スマイル リズム- -6p-

  8月15日のお盆頃 町内で配られた風鈴が風になびかれ、そこらじゅうで涼しげな音を奏でていた。
  しかし、その鈴とは、裏腹に古びた埃のかぶった茶箪笥に昔飾られた鈴が多く整列を成して並べられていた。

  ゴー、ゴゴー、ゴゴゴー、茶箪笥が揺れる、物が倒れる。 ガラス物、瀬戸物類が当たったり、落ちたりして割れる。
  パリーン、バリーン、バッシャン・・・!?
  床に落ちて割・れる、散・ら・ば・る。

  しかし、何物かの力が加わったのか!? 掛かったのか!?・・・・・・ゴ~ンゴ~~ン・・・・・・。
  散らばった物が割れた高さに浮き上がっていくと消えては、移動、再生。 浮いて、消え、移動、再生というリズムで壊れたものがリサイクル!?されていった。

  八つの鈴が一線に並んだ。
  各々に個性を持ち、鈴にオリジナルのカラーが煙のようにまとわり、色付いていく。
  目の前を畳まれた小さな小さな傘と見えないバトントワラーが通り過ぎて行った。

  鈴が幼児のバレリーナみたいに慣れないみたいにゆらゆらと踊り出す。
  八つでスカートとインナーバトンで『エーデルワイス』を奏でて生活用品を癒していく。
  エーデルワ〜イス、エーデルワ〜イス、低い歌声!?らしかったが、聴こえやすい天使の美声に鳴り、みんなの心に響いていった。

  綺麗な指先とステップの高いジャンプで両足が浮いて開いた。
  "エーデルワイス"が消え、一瞬だけ"白鳥の湖"に変わる。
  ピンライトが当たる、鈴が次から、次へとジャンブし、マンガを見ているみたいに動いた。

  色が変わって行き、八匹が順次に消えて行き、一匹の白鳥に成り、"白鳥の湖"を踊り始める。
  着せ替え白鳥の湖を演じた。
  声や動きが無い日常生活用品全品が心を打たれ、右へ→左へ←体を揺らされる。

  楽しい時は、過ぎて思い出に変わっていった。
  いつからか、フィナーレのジェンカが流れ出す。
  テケッテ〜テ〜レ〜テレレレ〜レッレッレッ、レッツ、キス、頬寄せて、
  みんなが前の相手の両肩に両手を置いていた。

  右、左、前、後ろ、前、前、前、見覚えのリズム感でみんなが楽しんで踊っていった。
  一人、また一人と画面から消えて行く。
  もちろん、笑顔で手を振って。

迷 彩映 (mei saiei・メイ サイエイ)
ぜりーえっぐ -スマイル リズム-
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