ハイエナ

別れ

 

ある夜、全ての羊が寝静まった頃、ハイエナは一匹こっそりと柵の外へ出た。

 

彼は去り際、いつものように番をしていた羊飼いの方を振り向き、非常に穏やかに言った。

 

「長い間世話になったね、色々酷い言動とってごめんな。しかし、これでも感謝しているんだよ。あんた、何だかんだで良い奴だよ。オレの事も最後まで面倒見てくれたし。」

 

「いや、すまなかったな。それでも…出て行くという事は、私が至らなかったのだろう。」

 

「仕方が無いよ。あんたも主も、飼いたかったのは羊であって、オレではないのだから。」

 

「羊として生きて行くのなら、ここに居ても構わない。」

 

「そりゃ無理だったよ。オレなりに努力もしたが…あんたもよく知っているだろう?」

 

「……両親の事が心配か?」

 

「あんたがしっかり面倒見てくれるだろう?彼らは羊だから。」

 

「そうだ。私の羊は私が責任を持って、しっかり見る。」

 

それを聞くと、ハイエナは安心した表情になり、しかし悲しそうに背を向けてとぼとぼ歩き始めた。泣いているようにも見える、その後ろ姿は、やがて夜の闇に消えていった。

 

 

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ありのままで生きる事への代償

 

 

たまたま目を覚まし、事の次第を見ていた一匹の羊が「あの子はどうなるのでしょう」と心配そうに羊飼いに聞いた。

 

羊飼いは「それがお前に何の関わりがありますか。お前は私に従いなさい。」と静かに答えた。

 

羊飼いがハイエナを探す事は無かった。彼は羊ではなかったからである。

 

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麺平良
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