ある金持ちの主が居て、彼は多くの羊を飼い、それを雇った羊飼いに管理させていた。
羊飼いは賢く、優しい性格であり、羊たちを愛情を持って飼育しており、主からも非常に信頼されていた。
彼は日々、盲目の羊の群を、牧草が豊かに茂る安全な場所へ導き、しっかりと番をして肉食獣等の外敵から守っていた。
ある羊のつがいが居た。他の羊たち同様、盲目で大人しく、羊飼いを信頼し敬愛していた。
そんな彼らに第一子が誕生した。
その子は他の羊たちと姿形が全く違っていた。盲目の両親や他の羊たちには分からなかったが、羊飼いはすぐに悟った。
羊飼いはすぐに主へ報告した。彼らは全く驚いていなかった。こういう事は彼らにとって、非常によく起こり得る珍しくもない事だったからである。
相談した結果、前例通り羊として飼育する事となった。
羊飼いは、産まれたその子を「ハイエナ」と名付けた。
羊たちにはその名前の意味が分からなかったので、深く考えずにその名を受け入れた。
ハイエナは他の子羊たちのように、ふわふわとした毛が生える事が無く、盲目でなかった。盲目の両親はその違いを「この子はたまに居る、少し変わった子羊なのだ。」と軽く考えており、たいして気にかけていなかった。