私は、はっきりと、奥さんに言いました。
ご主人が主人が慕わしいのです。
しかし、奥さんは、「この結婚は諦めているから、マキさんには、子供を育てるのを手伝って欲しい。」とごまかしました。
しかし、私は、嫉妬を隠すと、ドロドロになっていくのを、この奥さんから見ました。
シカには、嫉妬はない、しかし、シカは、主人公の恋人を殺したために、主人公に射殺されました。シカには、ただ、人間は醜い、という気持ちがあっただけでしょう。
私にも、奥さんへの嫉妬がなかった。しかし、醜さはありありと見えた。たいていの人は、醜さにふたをする。しかし、大切なことは、自分の罪を知っているかどうかでしょう。
シカが聖なる存在になって、私の中に入って教えてくれたことは、
どんなに汚い人間を見せられても、「哀れみ」を持っていかなければならない、ということでした。
罪というものは、自分の心を知らないことによって生じます。
シカは、自分の罪を知っていた、だからこそ、自ら破滅したような気がします。
私は、この、ナダレというシカが、かわいい。私の中に生まれてきた、この、聖なるシカとともに、大嫌いで片付けようとした人の罪を、「聖」というものでほぐしたい。
嫌いで終わらせたら、このかわいい、今は私の心の宝物になってくれたナダレに、恥ずかしいです。