トムと名乗ったその軍人はいかにもマジメな
見た目と話し方だった。
「場所は第4エリア最外部の民間工場で、民間の
シャトルで到着後、現地手配のシャトルに乗り
換えます。」
「ターゲットは1028体ですが、ジェニー型1024体に
加えて特殊型4体です」
「諜報部からの連絡では、当日6割前後が電子攻撃
により動作不可となる予定です。これは、バグを
埋め込んだプログラムをインストールされた
状態で起動することで可能となりますが、
詳細は割愛します」
「当日現地は銃器による武装はありません。従業員
の出勤もなし。重力1Gで大気は通常です」
「ターゲット機体ですが、民間工場で調整後、軍事
施設へ移される予定です。そのため、叩くなら
今回ですね」
「参加される3名は我が国の特殊部隊所属という
扱いになります。遺族の手当ても保証されます」
今回は打ち合わせに妻も参加している。このトム
の言葉に大きくうなずいた。
「3名は武器不所持の状態で突入します。
ターゲット機体があるラボに到着後、10分程度
かく乱したのち、シャトルで脱出します」
「現地警察および警備会社はすべて抑えました。
そのため、もし応援が来るとしても、2~3時間
は必要です。シャトル到着から脱出まで、最悪
でも1時間以内で済ませる計画です」
つまりこうだ、
まだ特定されていないある国による要人暗殺の
ためのアンドロイド部隊が作られようとして
いると。今回はそれをできる限り妨害して時間
稼ぎをすると。
でも、どうやらこのトムという軍人は、任務に
参加する3名を見て生還可能性が薄いと感じて
いるらしい。 高額の生命保険をかけたうえ
での自殺行為とでも思っているらしい。
遺族補償の話が丁寧すぎる。
ま、おそらく我々がシントウケイで本気で
ターゲットをつぶしにいこうと思っていること
など知らないのだろう。なんと言っても主力は
この、あくびしながら聞いている金髪の女の子
だからな。
「今回はキサラギ本社の協力も得ています。ええ、
その民間工場はキサラギ直系ではないですよ」
「社外秘となっている機体の弱点も出してくれま
した。胸部から腹部内奥に制御装置がありますが、
ある周波数で振動を与えると、基盤の電源系の
デバイスが破損する可能性があるとのこと、
あたりどころが悪ければ停止する可能性が
あるそうですね」
そうだよ。そこをシントウケイで狙うんだよ。
400体以上のジェニー型すべてのあたりどころ
を狙うなど何年かかろうが、無理だ、しかもこの
三人で、トムの顔がそう言っていた。
妻という外堀が埋められている時点でこの
話から逃げられそうになかったが、
絶対生きて帰ってやる。
そう、それにおれには、サキの仇をとるという
テーマもあった。少女を残して逃げ出したおれ。
「今回はあたしも参加するよ」打ち合わせ途中で
入ってきたのは化粧のけばいおばさん? えっと、
エマ?
いや、エマは最初からこの打ち合わせに参加して
いる。それにひと回りごつい、誰?