彼氏

私には彼氏がいます。しかし、心の問題と向き合う同士です。決して甘い関係ではありません。私は心の病なのです。

彼は、よくこんな自作の歌を歌います。「月は満月・・・、猫の集会・・・」

 

先日、私は大きく心を崩しました。泣き叫び、家に訪問看護の所長さんが二日連続で来ました。

私の心の中には、悪魔がいるのです。自分が怖く、気持ち悪いのです。

まるで、ドロドロの沼のよう。

所長さんは、初めて私につらくあたりました。いや、ほんの少しですが、私にはこたえました。私はわあわあわめいて、「所長さん、おんなじ。私を怒りたおした主治医の先生と・・・。」と泣き泣き言いました。

 

「月は満月・・・。」その時別室にいた彼のことを思いました。その時、心の中から、帝王切開のように、新しい自分が生まれたのです。

 

「こうちゃんは、猫が好きなんだ。猫は、お前だよ。」

彼の言葉を思い出しました。

そうだね、こうちゃん、月の下に集まる猫を、ただかわいいと思って眺める、こうちゃんがいてくれるから・・・。

気持ちを切り替えた私は「こうちゃん」を、所長さんのもとに呼び、三人で談笑しました。

 

私は、ずっとずっと、猫が嫌いだった。気持ち悪い動物と思ってた。女の醜さを持った生き物と思っていた。でも、月の下に集まってただ何もせずに、猫は仲間同士で集まるとこうちゃんに聞きました。猫は、美しい動物ではないか。誇り高い生き物ではないか。月をみんなで楽しんでいる・・・。

人を気持ち悪いと思う気持ちと、戦うことに負けたから、私は猫を嫌い、女を醜いと思い、人を醜いと思い、精神病になったのではないのか。

先生も、所長さんも、人の心の闇と戦い続けているのに・・・。

 

 

生まれ続ける

私は精神病患者。心の沼を知っている。でも、沼から見上げる月。猫の集会も、公園の闇の中から。闇から見上げるからこそ、世界は美しい。

だから、私は、病気の中から、新しく、生まれ続ける。

karinomaki

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