ピース

 木曜日の朝、7時ごろ、風来坊は、平原歴史公園の上空を旋回していた。亜紀の家の玄関から小太りの少年が出てくるを発見した。その少年は、アンナ、さやか、亜紀に向かってお辞儀をして、AIカラオケタクシーに乗り込んだ。そのタクシーは、国道202バイパスに向かって走っていった。風来坊は、ピースのことが心配で、カ~~、カ~~と亜紀に呼びかけた。亜紀は、上空を見上げ風来坊に手を振って合図した。朝食を終えた亜紀は、公園にかけていった。

 

 公園のベンチの背もたれにとまって、風来坊は亜紀がやってくるのを待っていた。息を切らせて走ってきた亜紀は、風来坊に声をかけた。「昨夜ね、ヒフミンが、大阪からピースに会いに来たの。ピースは、喜んでいたわ。とっても幸せそうだった。笑顔でみんなに別れを告げると、天国に向かったわ」ピースの死を感じ取った風来坊は、何も言わず、ピースを追いかけるように青空に飛び立った。

 

 風来坊は、いつものように伊都タワーで休憩することにした。今朝は、日曜日の奇妙な動物の先着はいなかった。鉄枠にふわっと飛び降りて、眼下に広がる糸島オリーブ園を眺めた。突然、風来坊の耳にオリーブ園方面から、ニャ~ニャ~とお腹を空かした子猫の泣き声がかすかに聞こえてきた。これは一大事と、風来坊は、オリーブ園の上空を旋回した。すると、必死に母親を探しているような真っ白な子猫が、目に飛び込んできた。

 

 

春日信彦
作家:春日信彦
ピース
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