小説家は、妄想世界の創造者です。だからといって、現実を否定しているのではないのです。現実から逃避し、妄想世界をつくり、そこから今ある現実の世界を眺めているのです。
現実から逃避すればするほど、いずれは現実に戻ってくると思っています。つまり、自分が作り上げた常識としての現実世界は、妄想世界から眺めて初めて客観視でき、冷静に意識できるからです。
おそらく、現実は、物質と運動から成り立っているように思えますが、また、現実は常識と非常識から成り立っているといえないでしょうか。だからこそ、多くの人は妄想世界を楽しみ、未来に期待できるのではないでしょうか。
私の小説は、人類にとって実現不可能とも思える共生が、妄想であり続けながら、現実に近づいてくれることを期待するものです。また、これからも、作家として人間という物質の未来を妄想し続けていきたいと思います。