世界はこんなに美しい

最上階

ついに、図は、最も美しい世界に到達しました。最上階です。私はまだ指輪を持っていました。私の周りの世界までも、美しさを極めました。義理の父を母に紹介され、立派なマンションに移り住むことを、私は母と義理の父に許可してもらいました。私はあの指輪と一緒に幸せになれるはずだった。

 

しかし、母が、私の幸せを奪いました。私の心の友の指輪をバカにして、持つことを禁じたのです。

ガラガラと、私の支えは崩れました。今思うに、指輪には、カントの哲学がたくさん詰まっていたと思うのですが、私はその指輪を失いました。

私は、それからも哲学を続けました。しかし、指輪なしでは、最上階にはいられませんでした。ガラガラと崩れ去った世界で私はまた孤独に暮らし、せっかく立派な人々を義理の父に紹介されてもうまくつきあえず、心はどんどん病んでいき、私はA病院という、精神病院に入院となりました。

 

入院

しかし、入院してからも、私は紙とペンを売店で買い、哲学を続けました。しかし、何回上昇の哲学をきずいても、すぐにガラガラと崩れるのです。

 

ああそうか、お守りだったんだ、あの指輪は、哲学したい、という思いをずっと吸収していたから、なくてはならないものだったんだ、と私は思いました。しかし、一個だけではだめです。何故なら、上昇して、自分なりの哲学の答えを出し、いちばんきれいな景色を見たのなら、そこにとどまれるためのもう一個のお守りが要る。

 

何回か入院して、退院した私は、パワーストーンのようなネックレスを、色違いで二つ買いました。

 

それを捨てて、またすぐに崩れる塔をたてたい欲求と戦っている私に、訪問看護士の所長さんは、言いました。こんなに素敵なネックレスなんだから、ぼくと、主治医の先生が入っていると思って大事にして、苦しい上昇の哲学はやめるんだよ。そうしないとまた病気が悪くなるから。

哲学の苦しみと安らぎ

哲学は、苦しみです。上昇を続け、少し休んでも、また上昇。しかし、ある程度頑張れば、安らぎも待っています。

カントの純粋理性批判は、苦しみと孤独との格闘、しかし、カントは、次に実践理性批判を書いています。その中に出てくる、「目的の王国」こそ、カントの安らぎの国であったでしょう。私は、母に、上昇の哲学の軌跡を全て捨てられた。しかし、今、私がいる場所は、目的の王国です。世界は、頑張り続けるもの、しかし、あまりに苦しい頑張りのあとに、大きな、「この世は美しい」と思える、安らぎが待っているはずです。私は、哲学を続けます。しかし、崩れる塔をたてる、地獄のような哲学から、二つのネックレスが救ってくれました。

karinomaki
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