エロゴルフ(2)

 植木の真剣な顔に威圧された松山は、腕組みをして、苦虫を嚙み潰したような表情の顔を天井に向けた。気を持ち直した松山は、N大臣の言葉を思い出しながら話し始めた。「確かに、日本は沈没する。もう、手遅れだ。54基の原発は、必ず、テロの攻撃を食らう。農業に適した日本の気候は、気象兵器で破壊されている。日本の経済水域は、オイルで汚染された。農業も漁業も壊滅だ。さらに、高額な兵器購入と多額の米国債購入で、年金原資は、空っぽになった。日本国民は、放射能に汚染され、食うものもなく、ホームレスになって、犬死するしかない。もはや、誰が総理になっても、日本を救うことはできん。植木も、そう思うだろ」

 

 植木は、黙って耳を傾けていた。確かに、大げさな話だと思ったが、現政権のままだと、本当に日本は沈没するような気がしていた。だからといって、このまま犬死するのもしゃくだった。同じ、死ぬなら覇権主義と戦って、CIAマフィアに一泡吹かせて死にたかった。植木は、F大学時代からアメリカの諜報機関について調べていた。CIAマフィアが国防省、FBI、大統領までもコントロールし、さらに、世界中にテロやクーデターを起こしていることも調べていた。

 

 肩を落とし蒼白になった植木は、絶望的な声で話し始めた。「会長のおっしゃる通りです。もはや、手遅れでしょう。ケネディ兄弟が暗殺されなければ、このような地獄の世界にはならなかったのです。悪いのは、すべて、マフィアに変貌したCIAです。アメリカを世界一豊かな国にするために組織されたCIAが、どうして、悪魔のようなマフィアに変貌してしまったのか。CIAがこのまま悪魔化していく限り、世界は崩壊する。この世界を救うには、CIAマフィアを破壊しなければなりません。でも・・」

 

 植木は政治の話をし始めるとなぜかくそまじめになる。松山はそのことが以前から不思議でならなかった。日頃は愉快で柔和な顔の植木だったが、政治の話となると豹変したかのような強面になるのだった。ところが、今日に限って植木は泣き出しそうな表情を見せた。このような弱気な植木を見たのは初めてであった。なんとなく気まずくなってしまった松山は、話を変えることにした。

 

 「まあ、そう嘆くことはないさ。日本には神風があるじゃないか。全国には、春日神社がるだろ。春日の神様は、日本を邪馬台国の時代から守ってくださっているんだ。元寇襲来の時のように、きっと神風を起こして日本を救ってくださるさ。もっと、気楽に考えてもいいんじゃないか。いつもの強気の植木はどこに行ったんだ。そうだ、俺の厄払いも兼ねて、ナカスでパ~~とやるか」

 

 今の植木は中洲でパ~とやる気分ではなかったが、泡姫の色気で松山の臆病神が消え去ってくれるのなら、泡にまみれて踊るアホ~になるのも悪くないように思えた。「そうですね。もはや、日本は呪われている。このまま、犬死するのもしゃくじゃないですか。同じ死ぬなら、泡遊びをとことんやって死にましょう。泡姫といえば、ジャーナリストの岡崎が詳しいですよ。ちょっと、聞いてみますか」

 

 ちょっと元気が出てきた植木に松山はほっとした。「ああ、あの時の。能天気な遊び人か。それはいい。善は急げというじゃないか、早速、聞いてみてくれ」植木は、ルミ子似の泡姫を思い浮かべた時、突然、皇帝KGBツーリストの大原の股間が脳裏に浮かんだ。急激にピンクの股間がズームアップされると疑問が噴き出してきた。「そう、話は変わりますが、我々を色仕掛けで勧誘した大原というのは、N大臣暗殺に加担していたんじゃないでしょうか?まさか、大原が犯人ってことは?」

 

 勧誘と聞いた松山も大原の色仕掛けに疑問を感じていた。今回のN大臣暗殺は、綿密に計画された策謀のように思えてならなかった。「ウ~~、そうか。確かに。におう。大原のメギツネめ、一杯食わせやがったな。万が一、アイスピックに俺の指紋が残っていれば、俺が疑われていたところだった」指紋を消した誰かがいると思った植木は、目を輝かせ、松山を見つめた。

 

 「今、何と言われました。指紋が残っていれば・・」松山もはっとした。「そうだよな。そうだ。指紋がないってことが、おかしいんだ。確かに、俺は、あの時、N大臣に頼まれて、アイスピックで氷を割った。だから、俺の指紋が残っていなければならない。なのに、俺の指紋は、全く残っていなかった。つまり、誰かが、俺の指紋をふき取ったということだ」

 

 植木は右手のこぶしを左手のひらにパチンとぶち当てた。「指紋をふき取ったのはだれか?ヒットマン?。いや、こうも考えられます。N大臣は、会長に容疑がかからないようにと、あえて、会長の指紋が残らないようにアイスピックをきれいにふき取った。こう考えても、不自然ではないような気もします。ウ~~・・」植木は、腕組みをして考えこんだ。そういわれると、松山もN大臣が拭き取ったような気がした。

 

 松山は、大きくうなずき話し始めた。「確かにN大臣が俺のことを考えて、ふき取ったとも考えられなくもない。でもな~~、自殺するときに、そこまで頭が回るものだろうか?仮にだ、アイスピックに俺の指紋が残っていたとしよう。俺の指紋が残っていたからといって、俺が殺人罪に問われるだろうか?俺には、殺人動機がまったくない。冤罪になる可能性は、ないように思うが」

 

 植木も大きくうなずき返事した。「そうですよね。会長の指紋が残っていたからといって、殺人者になるとは到底思えません。殺人動機もなければ、争った形跡もなかったのですから。ということは、うかつにも、指紋をふき取った人物こそ、N大臣殺害の犯人ということです。指紋のことは、警察に話されたのですか?」松山は、顔をゆっくり左右に振った。

 

 植木は、ホッとしたような表情を見せ、松山に忠告した。「それは、よかった。私たちが推察したようにN大臣が暗殺されたのであれば、マフィアがもっとも警戒するのは、あの夜同室していた会長です。今、指紋のことを警察に訴えれば、たとえ公開されなくとも、その情報は警察内部から犯罪組織に流れるでしょう。そして、犯罪組織の打つ手は、火を見るより明らかです。会長、この指紋の件は、絶対に他言してはなりません。私も、聞かなかったことにいたします」

 

 松山の体は、小刻みに震えていた。「まさか、俺まで暗殺されるってことはないよな。おい、植木。冗談じゃないぜ。俺は、何も知らないし、警察でも、N大臣のことについては全くなにもしゃべってない。こんなことになったのも、あの大原というメギツネのせいだ」植木も大原のことが気になっていた。セールスレディーの大原も暗殺事件に加担していたならば、きっと、会長の様子を探りにやってくるような気がした。

 

 「会長、どうも、あの大原は気になりますね。彼女が、暗殺に加担していたという確固たる証拠はないわけですから、何とも言えませんが、なんとなく、近々、会長に接近して来るように思えます。彼女が、N大臣自殺事件のことに探りを入れてきたなら、彼女も一枚かんでいるとみて間違いないでしょう。どんなことがあっても、指紋の件だけは、黙っていてください」松山は、大原の股間を思い出すと色仕掛けにやられた自分がみじめに思えた。

 

                忠告

 

 25日(月)午後3時に、雷山の別荘で松山はN大臣自殺事件の件で二人の刑事と会う約束をした。その事件のことは、すでに警察にはすべてを話したからこれ以上話すことはないと伝えたが、皇帝KGBゴルフ俱楽部について少し伺いたいというのでやむなく面会することにした。二人の刑事は、定刻に別荘にやってきた。松山は、何も話したくなかったが、質問を促した。

 

 

サーファーヒカル
作家:春日信彦
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