エロゴルフ(2)

 植木は、頭の中で密かに今後の作戦を練っていた。国会議員と皇帝KGBバンク役員との秘談をネタに国会議員を利用できるかもしれない。もしかすると、メインバンクをめぐっての談合なのかもしれない。いや、建設予定地か?今のところ、大阪に予定されているが、九州では、長崎、宮崎も候補地にあがっていたはず。建設予定地に関しては、不動産会社がかかわるわけだ。不動産会社といえば、九州ではトップの華丸不動産も動くはず。

 

 岡崎は、カジノの件にかなり詳しかったが、もしかしたら、華丸不動産専務である父親に依頼されて、カジノ建設予定地を探っていたのかもしれない。いつものごとく、買収して、地上げをするつもりだな。そうか、ジャーナリストというのはカバーで、華丸不動産のスパイってわけだな。どおりで、金回りがいいはずだ。植木は、ディナーショー招待の話を餌に、取引をしてみることにした。政界とつながりの深い華丸不動産を味方につければ、会長の政界進出は夢でないように思えてきた。

 

                取引

 

 早速、211日(日)、午後8時に、植木は中洲のクラブミニスカで岡崎と会う約束をした。植木は約束時刻の10分前に到着した。予約を確認したボーイは、左奥のテーブルに案内した。テーブルに着くとまだ145歳と思われるような浅黒い少女が右横に腰掛けた。この店には、未成年者と思われる少女がたくさんいる。本当に未成年であれば、風俗営業法違反に当たると思ったが、年齢を確かめる気にはならなかった。

 

 「オジサン、アタシー、ミク。ヨロピク。ミズワリデ、イ~?」ぎこちない日本語が耳に入った。植木は、一瞬身を引いた。色白もいれば浅黒いのもいる。この子たちは、日本人じゃない。不法入国のタイ人、ベトナム人、フィリピン人たちじゃないだろうか?やはり、ここはヤバイ店かもしれない。引きつった顔で「ハイ」と返事するとあどけない少女はカウンターに走っていった。

 

 テーブルについて20分ほどすると両脇に少女を抱きしめた岡崎が、笑い声をあげながらテーブルにやってきた。ソファーに腰掛けると早速大きな目をギョロギョロさせて口火を切った。「折り入って、話とは?」植木は少女たちに話を聞かれるようで話しにくくなってしまった。「いや、ちょっと、ほら、N大臣の。でも、この子たちに聞かれるとまずいような」岡崎は、かぶりを振ってこたえた。

 

 「心配いらん、この子たちは、あいさつ程度しか、日本語はわからん。N大臣のことで、まだ取り調べがあるとね。ポリちゃんも、しつこかね~」少女たちのことが気になった植木は、N大臣の話は後回しにすることにした。「そっちの件は、まあ~、今日は、カジノのことを聞きたくて」岡崎は、カジノと聞いて、真剣な表情を作った。「カジノといいますと?」植木は、右横の小顔少女をちらっと覗き見ると話し始めた。

 

 「ほら、この前言っていたでしょ。第一号カジノは大阪が濃厚だと。福岡はどうなのかと思って」岡崎は、一つうなずいて答えた。「今のところ、第一号は大阪でしょ。第二号は、混戦ですな。関東では、東京、神奈川、千葉、九州では、長崎、宮崎、などの候補地が上がっています。そう、北九州に作りたいという議員もいますしね~。何とも言えませんな」やはりそうかと思った植木は、うなずき、話を続けた。「ここだけの話ですよ。本当にこの子たちは大丈夫でしょうね」岡崎は、マジな顔つきで答えた。「気にせんでよか~~」

 

 身を乗り出した植木は、小さな声で話し始めた。「国会議員が招待されているディナーショーに、会長と私も招待されたんです」国会議員と聞いた岡崎は、口元に運んでいたグラスをピタッと止めた。グラスをテーブルに置くとジャーナリストの表情を見せた。「その話は、ここではまずい。場所を変えましょう」岡崎は、立ち上がるとカウンターに向かった。ママと話し終えて戻ってきた岡崎は、「出ましょう」と声をかけてドアに向かった。

 

 二人は、六本松にある岡崎のマンションに向かった。岡崎は、一人住まいにもかかわらず、3LDKの高級マンションで優雅に暮らしていた。植木は、あまりの豪華さに目を丸くしてしまった。リビングに案内されると、岡崎はサイドボードからグラスとマッカランを取り出してきた。それをテーブルに置くとフリッジから氷と水を運んできた。「ここだったら、盗聴されることもない。早速、例の話をお聞きしましょう」

 

 岡崎は、水割りを二つ作り、一つを植木に差し出した。植木は、なんとなく緊張していた。ディナーショー招待の話は、N大臣暗殺の口封じのようで、他言することに慎重になっていた。「先日、タイツアーに勧誘したセールスレディーの大原がやってきましてね、タイツアーでは大変ご迷惑をおかけしました、と言って、お詫びにとディナーショーに我々を招待したんです。でも、会長は、この話は不自然だから断ると言ってるんですが、やはり、断るべきでしょうか、ジャーナリストでいらっしゃる岡崎さんのご意見を伺いたくて」

 

 グラスを傾けカランとグラスを響かせ、岡崎は首をかしげた。「ほ~、ディナーショーにですか。先程、国会議員のことを言われてましたね」植木は、一口水割りを流し込み、一息おいて返事した。「そう。それがですね、そのディナーショーというのは、ロシア皇帝KGBバンク幹部役員と国会議員たちへの接待らしいのです。そこに我々も招待するというのです。どう思われますか?」岡崎は、腕組みをして考えをまとめているような顔つきで、うなづいた。

 

 何かひらめいたような顔つきになると話し始めた。「なぜ、植木さんたちをディナーショーに招待したか?そこですね。確かに、会長がおっしゃるように不自然です。万が一、N大臣が暗殺されていたとするならば、犯罪組織の監視とも考えられます。でも、彼らの手に乗ってみるのもわるくない」植木は、腑に落ちなかった。「それじゃ、ディナーショーに招待されてみてはどうかと」

 

 岡崎は、グイっとウイスキーを飲み込むと眉間にしわを寄せ話し始めた。「N大臣のことですが、私は、暗殺と確信しています。自殺の動機が、全くないわけですから。おそらく、マフィアによる暗殺でしょう。そう考えると、ここで招待を断れば、ますます、お二人を警戒すると思われます。むしろ、素直に招待されたほうが、相手方は警戒を緩めるように思われます。それと・・」

 

 植木も岡崎の考えに同感だった。「それと、何か?」岡崎は、国会議員のことが気になっていた。「ロシア皇帝KGBバンクの役員と国会議員の密談が、気になるのです。国会議員が絡んでいるとなれば、水面下で大きなプロジェクトが推し進められていると考えてもおかしくありません。もしかすると、カジノかも?」植木はカジノと聞いて身を乗り出した。「やはり、カジノですかね」

 

 岡崎は、東京まで出かけジャーナリストの仲間からカジノに関する情報をとっていた。もしかしたら、N大臣の暗殺は、カジノの件が絡んでいるのではないかとふと思った。カジノ運営には、日本の暴力団だけでなく、国際的ないろんなマフィアが絡んでくると考えられる。利権が絡み、マフィアの抗争は避けられない。いったん、カジノが運営されれば、付属して麻薬の売買、不法入国者の売春、議員とマフィア間の贈収賄、など日本警察でも手が出せないような国際的な犯罪が勃発する。

 

 岡崎は「虎穴(こけつ)にいらずんば、虎児(こじ)を得ず」とつぶやき、話し始めた。「植木さん、彼らの手に乗って、ディナーショーに招待されてみてはいかがでしょう。もしかすれば、国会議員連中についたコンパニオンたちから、カジノ予定地についての情報を得られるかもしれません。どうです?」植木は、地雷が埋め込まれた危険地域に一歩足を踏み入れるような恐怖を覚えたが、会長を国会議員にするために一か八かの賭けに出ることにした。

 

サーファーヒカル
作家:春日信彦
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