小説の未来(14)

               小説家の役割

 

 読書が趣味という学生は、どれほどいるのでしょうか。人気がある推理小説でも、面白さの点においてはゲームにはかなわないでしょう。学校が読書感想文を課すことによって無理やり読書をさせたとしても、主体性のない読書からは、読書の面白さを体感することはできないように思われます。

 

 生きている限り必ず沸き起こる恐怖を客観視し、それに耐えうる心を育てるには喜怒哀楽の感情言語の育成は不可欠と思われます。仮に、今後、感情言語の育成が十分になされずに育った大人たちが増加していけば、人間の共生は難しくなって行くように思われます。些細なことで争うような人間集団が出来上がるのではないかと不安です。

 

 今後ますます、ゲームクリエイターは、人を虜にする麻薬性の強いゲームを創造していくと思われます。ゲームが感情言語の貧困化を招くからといって、ゲーム依存を阻止することはできないでしょう。そう考えてみると、小説家の役目は、ゲーム依存生活をしっかり見つめ、感情言語の普及に努めることのように思えます。 

 莫大な利益をもたらすゲーム産業が主流の経済では、これからの小説家は、経済的に優遇されることはないでしょう。でも、チャレンジイングな小説家のには、ゲームによって失われていく感情言語を少しでも復活してくれることを期待しています。

 

 確かに小説は単なる娯楽でしかありません。しかし、感情言語を作り出す小説は、人類の「平和と共生」の実現にはなくてはならないものと思っています。わたくし自身、自作が少しでも「平和と共生」に役立ってくれればといつも願っています。

 

 アマの小説家であり続けることは、いばらの道を歩むことになるでしょう。たとえそうであったとしても、誰かがそのような道を歩まなければならないと思っています。今、”何のために小説を書いているのだろう”、と自問自答しているということは、まだ生きている証なのかもしれませんね。

春日信彦
作家:春日信彦
小説の未来(14)
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