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スパイダーはここぞとばかり風来坊に食って掛かった。「神の使いだったら、もっとしっかりやってくれよな。僕たちには、予知能力なんてものはないんだから」風来坊は、面目ないという表情で謝った。「おっしゃる通り。まったくもって、不甲斐ない。我々は、最高の予知能力を持っていると自負していたんだが、この機会に予知能力の向上を図るために、各国に予知能力研究委員会を作り、毎年一回、全国予知能力会議を開くことにした。最近の奇妙な災害に対する明確な予知が必ずあるはずなんだ。必ず、発見してみせるから、いましばらく待ってくれ」

 

ピースは、今までにない奇妙な天災が続いていることに疑問を抱いていた。風来坊の話を聞いて、やはり、これらは天災ではなく、人工災害ではないかとピンときた。「最近の災害は、どうも腑に落ちないのよ。アメリカにもエージェント仲間がいるんでしょ。彼らは、なにかつかんでないの?」風来坊は、しばらく黙っていたが、ヒューストンエージェントの仲間から聞いた情報を話すことにした。

 

「ピースさんも、不審に思っておられましたか。まだ、はっきりとしたことはわからないのですが、ヒューストンエージェントの仲間からの情報では、北アメリカ、南アメリカ、などに起きた災害の予知に共通するものがあり、いつもの天災の時の予知とは違うとのことなんだ。もしかすると、最近の災害は、気象兵器によるものではないか?と彼らは言うんだ。とにかく、一刻も早く、奇妙な災害に対する予知能力を研究し、動物だけでなく人間も救わなければならん」

 

卑弥呼女王は、目を閉じてじっと風来坊の話に聞き入っていた。目を開くと心静かに透き通った声で話し始めた。「天災の予知のことは、カラスさんたちにお任せしましょう。私たちネコは、戦争を好む下品な人間の心を少しでも上品にする役目に専念いたしましょう。ピースさん、カラスさんたちに負けないように私たちも頑張らなくてはなりません。イヌさんたちは、被災して悲しんでいる人たちを励ましてあげてください。動物たちが力を合わせれば、きっと人間を上品な動物にできるはずです。人間を卑下(ひげ)するのではなく、少しでも向上させるのが、我々動物の役目だと思います」

 

 マジな顔つきで目を輝かせて聞き入っていたピースは、ヒョイと立ち上がって拍手した。「さすが、ヒミコ様。地球を守るのは、我々動物です。一致団結して、人間たちをしっかり教育してまいりましょう。そうだ、カラスさんたちは、予知能力研究委員会を作られるのだったら、ネコたちは、品位向上委員会を作りましょう。イヌさんたちは、被災者たちを励ます激励支援委員会を作るといいんじゃない」

 

 ピースの話に賛同したスパイダーもヒョイと立ち上がり拍手した。「地球は、みんなで守ろう。人間の好き勝手にさせていたら、自然環境は破壊され、すべての動物は死滅してしまう。動物たちは、それぞれの委員会を作って、地球環境向上に努めればいいんだ。カラスさん、世界中の動物たちにこのことを広報してくれ。頼むよ」風来坊は、大きくうなずき、ドヤ顔で返事した。「世界中にいるシーアイエーのエージェント仲間に早速指示を出そう。動物たちは地球環境保護委員会を作るようにと。今日の会議は、実に有意義だった。スパイダーも最近は、賢いことを言うようになったじゃないか。見直した」

照れ隠しに頭を書いたスパイダーは、聞きなれないCIAについて質問した。「風来坊さん、さっきのシーアイエーってのは、いったい何なんだい?」風来坊は、略語の説明をした。「シーアイエーと言うのは、Crows Intelligence Agencyの略さ。我々は、特に予知能力が高いカラスたちを世界中から集めてカラス情報局を作っているんだ。彼らは、人間の知能をはるかに超越した予知能力と感性を持っているんだ。情報に関することは我々CIAに任せてくれ。君たちは、人間を教育してほしい」

 

卑弥呼女王は、目を開くと第3次世界大戦のことについて話し始めた。「風来坊さんの諜報活動は、動物たちの生命維持と団結に、なくてはならないものです。でも、一方で人間は戦争と言う殺戮(さつりく)活動を今も続けています。人間は、共存の大切さがまったく分からないのでしょう。本来、人間は我々と違い欲がとても強い動物なのでしょう。そのうえ、お金を発明した人間は、お金の奪い合いに明け暮れるようになってしまいました。欲をコントロールできなければ、今後も戦争と言う殺戮活動を続けることになります。

 

もはや、戦争の拡大を人間の力では食い止めることができなくなっています。かといって、果たしてネコやイヌに人間を教育でるかどうきるかどうか、不安です」野蛮な人間の姿を想像するとピースも心細くなってしまったが、勇気を出して叫んだ。「ヒミコ様、弱気は禁物です。人間に最も信頼されているのは、ネコじゃありませんか。ネコが全力で教育すれば、きっと人間も変わるはずです。やるしかないのです、ヒミコ様」

 

ピースに賛同したスパイダーも大声で叫んだ。「オレはやるぞ~~。人間になんかに地球を破壊されてたまるものか。きっと守ってやる。ピースさん、一緒に頑張ろ~~」悲しげな表情をしていた卑弥呼女王だったが、ピースとスパイダーの元気な声で勇気が湧いてきた。「そうね、私たちが諦めてしまえば、地球は終わりよね。弱音を吐いている場合じゃないわね。一致団結して、頑張りましょう」

 

突然、風来坊が、カ~~と明るい声を発した。「ヨ~、ポンタじゃないか。元気かい。今、人間の悪口を言っていたところなんだ」公園の裏山に住んでいるタヌキのポンタが、話声を聞きつけてやってきた。「いい気持で寝ていたのに、スパイダーの大声で目が覚めちゃったよ。いったい、何事だい」スパイダーが即座に返事した。「欲が突っ張った戦争好きの人間に、いつまでも好き勝手な真似をさせていたら、地球はダメになってしまうって言っていたんだ。ポンタもそう思うだろ」

 

首をかしげたポンタは、おびえた顔つきになって答えた。「いや、まあ、なんといえばいいか、俺らタヌキは、アホだから、難しいことはわかんない。最近、仲間が猛スピードで突っ走る黒いバケモノに踏み殺されているんだ。まったく、俺たちって、つくづく、アホだと思うよ。逃げ足が遅いと言うか、鈍感と言うか、知能が低いというか、あきれるよな。君たちは、動物の中のエリートだから、人間のことは、君たちに任せるよ。もっと、住みよい地球にしてくれ。たのむ」

春日信彦
作家:春日信彦
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