エロゴルフ(1)

 「話と言うのは、マージャンクラブで懇意にさせてもらっている社長さんから聞いた話なんですが、タイのゴルフ倶楽部会員のことなのです。そこのゴルフ倶楽部会員になれば、信じられないような特典があるそうなのです。すでに日本の多くの政財界人たちが会員になっているようで、今後、政治家との交流を深めるにはもってこいのゴルフ倶楽部会員なのです。いかがですか?」松山は、突然のゴルフ倶楽部会員の話で、まったく内容がつかめなかった。「おい、もう少し、具体的な話をせんか。さっぱりわからん。そこの会員権はいくらするんだ。べらぼうに高いんじゃないか?」

 

 一度うなずいた植木は、眉間に皺をよせ思い出すような顔つきで話し始めた。「本社は、ロシアのボグログラードにあるそうですが、ロシア政府管轄下のロシア皇帝KGBバンクが大株主のロシア皇帝KGBカンパニーという会社があるそうです。そこが全株出資しているという皇帝KGBゴルフ倶楽部が、数か国に現地法人としてあるそうです。タイ以外にもベトナム、マレーシア、フィリピンにも皇帝KGBゴルフ倶楽部があるそうです。セールスレディーに電話で聞いたところ、会員権は100万円と言うことでした。かなりお得じゃないですか」

 

 松山は、計算高い植木にしては、バカな話を持ってきたと叱るような口調で返事をした。「おい、確かに、100万は、やすいかもしれんが、タイのへき地じゃないか。そんなところにあるゴルフ俱楽部がお得と言えるのか?宿泊費と交通費を考えてみろ、どこがお得なんだ」一瞬ひるんだ植木だったが、真剣な眼差しで返事した。「会長、話はまだ終わっていません。本当にお得な話が、まだあるのです」

 

 松山は、ゴルフの会員権の相場は低下する一方で、これから投資する商品ではないと思っていた。ちょっとムキになり大人げない発言をしたと反省した松山は、自分の考えを述べた。「もう、会員権はやめた方がいい。きっと損をする。タイと言えども、同じに決まっている。ロシア皇帝KGBとやらは、初めて聞く会社だな~。ちょっとヤバイんじゃないか?眉唾物の商品に手を出すと、痛い目に合う。植木も、焼きが回ってきたな」植木は、会長を睨み付けると胸を張って答えた。「会長、焼きが回ったとは、私も、見くびられたものですね。とにかく、話を聞いてみてください」

 

 ドヤ顔の植木に圧倒された松山は、とにかく話だけでも聞くことにした。「まあ、そこまで言うのなら聞こうじゃないか。儲け話は好きな方だし」植木は、腕時計に目をやると即座に返事した。「11時の約束です。セールスレディーの大原さんが、もうそろそろ来る頃です。彼女から、詳しい話をお聞きになってください」松山は、タイからセールスレディーがやってくると勘違いした。「おい、タイからセールスに来るのか?」

 

 笑顔を作った植木は、即座に返事した。「そんな馬鹿な、ロシア皇帝KGBカンパニー傘下の系列会社に皇帝KGBジャパンツーリストと言う旅行会社があるそうで、そこの支店の一つ博多駅南支店からやってくるそうです。九州の政財界人がかなり会員になっているみたいで、彼女はA衆議院議員やY都市銀行の役員たちが会員だと言っていました。電話の声では、かなり色っぽい声でしたよ。楽しみですね」松山は、女性のセールスレディーがやってくると思うと、少しワクワクしてきた。

 

 植木がもう一度腕時計をチラッと覗いた。その時、訪問客を知らせるチャイムが鳴った。ピンポ~~ン、ピンポ~~ン、松山の膝からぴょんと飛び降りたピエロは玄関にかけて行った。植木が玄関に向かおうと立ち上がった時、女性の色っぽい声がリビングまで響いてきた。「皇帝KGBジャパンツーリストの大原と申します。御在宅でしょうか?」即座に、声に反応した植木は、出迎えに玄関にかけて行った。ソファーの横に突っ立った松山がハゲ頭に右手を置いて恥ずかしそうな表情をしていると植木が濃厚な色気をプンプンさせたロシア人女優のような超ミニスカのセールスレディーを案内してきた。

 

 「ここ、こちらが、伊都タクシーの松山会長です」植木は、あまりの色気に興奮し、声が上ずっていた。彼女は名刺を差し出し、自己紹介した。「わたくし、皇帝KGBジャパンツーリストの営業を担当しています大原と申します。よろしくお願いします」松山も超ミニスカから伸びた妖艶な長い脚に目が行くと心臓がバクバクとなり始めた。腰かけると長い脚を斜めに倒し、股間を隠すかのように赤いファイルを太ももの上に置いた。松山はにやけた顔で挨拶した。「ようこそ、いらっしゃいました。今、植木からタイにある皇帝KGBゴルフ俱楽部の話を聞いていたところでした。とても素晴らしいゴルフ俱楽部と言うことで、さらに、詳しい話を聞きたいと思っていたところでした。おい、お茶」

 植木は、キッチンに飛んでいき、フレッジから十六茶のペットボトルを取り出し、震える手でお茶をグラスに注ぐと、両手の震えを抑えながら3つのグラスを載せたトレイを運んできた。そして、固まった顔つきで彼女の前にそっと差し出した。「どうぞ」植木が顔を覗くと輝くブルーの瞳で笑顔を返してきた。透き通る肌の巨乳の谷間に釘付けになっていた松山は、何と言って声かけしていいか戸惑ってしまった。「実に、お美しいですね。あなたのような美人は初めてです。こんなド田舎には、ブスしかいないもので。失礼な質問ですが、あなたは、ハーフでいらっしゃるんですか?」

 

 彼女は、ニコッと笑顔を作り返事した。「はい、父がロシア人で、母は日本人です。モスクワ大学を卒業後、弊社に入社いたしました。昨日、植木様からお電話をいただき、皇帝KGBゴルフ倶楽部会員についてご説明させていただけるということで、早速参りました。皇帝KGBゴルフ俱楽部には、数か国に現地法人がございますが、今回は、タイ法人についてご説明させていただきます。概略は、お聞きになられたそうですが、ゴルフ俱楽部会員の特典について、まず、ご説明いたします」股間を隠すように太ももの上に置いていた赤のファイルから大原は資料を取り出した。

 

「プレイフィーは、ワンラウンド、日本円で約3万円、ツーラウンドプレイの三泊四日のツアーですと宿泊費、プレイフィー、諸雑費で合計約14万円です。皇帝KGBゴルフ倶楽部自慢のサービスとして、会員様がプレーなされる場合、キャディーのほかにお気に入りのコンパニオンを一人お付けいたします。また、ホテルに宿泊なされた場合、オプションにはなりますが、夜のコンパニオンを派遣することができます。プレーしながらコンパニオンとデートできるという企画は、多くの会員様に喜んでいただいております。今までの説明でご質問はございますか?」

 

二人は、コンパニオンと聞いて目を丸くした。日本には当然あり得ない話で、コンパニオンと一緒にプレーできるとあれば、スケベな金持ち政財界人たちの購入は納得できた。松山は、あまりにも贅沢なサービスに度肝を抜かれたが、スケベ心がムクムクと沸き起こり質問することにした。「はあ、そのコンパニオンサービスですが、プレー中にデートすると言っても、彼女たちはタイ人でしょ。日本語は話せるのですか?」

ピクピクっと引きが来たと感じ取った彼女は、笑顔で答えた。「コンパニオンは、タイ人、ベトナム人、フィリピン人、インドネシア人、ネパール人、インド人たちで、おっしゃるように日本語は、あいさつ程度しか話せません。でも、話せない分、スキンシップでサービスをさせていただいております。よほどコンパニオンのサービスが気にいられたのか、三名のコンパニオンを帯同なされる会員様もいらっしゃいます」

 

スキンシップと聞き、口をとがらせて二人は見つめ合った。おさわりの妄想を膨らませた松山はスキンシップについてもっと具体的に聞きたかったが、スケベジジイと思われるようで、出かかった言葉をグイッと飲み込んだ。平静な顔を装った松山は、話を進ませた。「なるほど、素晴らしいサービスですね。コンパニオンがつくとなれば、プレイフィー3万円は、お得ということですな。まだ、特典があるのですか?」

 

食いに入ったと確信した彼女は、股間の奥が見えるように脚をゆっくり組み、真っ赤なショーツをサービスした。「はい、皇帝KGBホテル内のスポーツ施設の使用料、レストランでの飲食代は一般料金の半額となります。また、最も人気のあるカジノでお遊びなされる場合、500万円までのご融資を無利息で行っています。そのほかにもいくつかの会員様向け割引がありますが、それらについてはこちらのパンフレットをご参考になさってください」

 

彼女は、膝の上に置いていたファイルからパンフレットを取り出し松山に手渡した。真っ赤なショーツが脳裏に焼き付いた松山は、視線を股間に向けたままパンフレットをうわの空で手に取った。「少し早口で説明いたしましたが、ご質問はございませんか?」生まれて初めて見たロシア美女の透き通る肌の内腿の残像が目に焼き付き、松山の頭は、完全に思考力を失っていた。いつの間にか二人の股間は盛り上がっていた。植木は顔を真っ赤にして股間を両手で抑えていた。この二人は、かなりスケベジジイと確信した彼女は、詰めに入ることにした。

春日信彦
作家:春日信彦
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