趣味じゃない生業でもない「ゆるい起業」

はじめに

 この本は、会社を定年などで退職した後に再雇用や再就職せずに暮らして行きたい人たちを念頭に置いて書きました。

 会社を退職した直後は自由な時間に浸って楽しい時間を感じますが、多くの人々にとって自由で楽しい時間は短期間で過ぎ去り、退屈で長い老後の時間が待っているという説があるようです。しかしこの説は少しの発想の転換によって、必ずしもそうならない手段があります。

 会社を辞めたら毎日自分の好きなことを仕事にして、楽に楽しく暮らしたい。それでもたまには旅行したい。私はずっとそんな生活が出来ないかと会社員時代に考えていました。

 こんな暮らしはまるで夢のような話ですが。それを実現することはあまり難しくはありませんでした。豪華な暮らしでそのような夢の生活をすることはお金をたくさん稼いで貯めないと無理ですが、発想次第やり方次第で自分の好きなことを仕事にして楽しく生活することはそんなにハードルが高くありませんでした。

 私は51歳で会社のリストラを機会に退職してその後ゆるい起業家に転身しました。会社をリストラや定年で退職するときには退職金が支給され、公的年金もやがて支給開始になり、住宅ローンは終わりを迎え、子どもは独立を果たす時期に差し掛かってくることでしょう。そうなるともはやそれまでの暮らし方から少し変えても良い頃かも知れません。

 従って、今までの働いて稼ぐやり方の発想を変えて、自分の遊ぶためのお金を、自分の好きなことで小さな事業を始めて稼ぎ出すことにする考え方が浮上してきます。年金と貯えが既にあるから生きて行くお金は足りている可能性があります。

 この本は、そのようにゆるく稼ぐ起業のアイデアとやり方について、本著は私が52歳から開始したアーリーセミリタイアで試行錯誤してきた「ゆるい起業方」をまとめたものです。

目次

  • はじめに
  • 目次
  • ゆるい起業は、明るい未来のアイデアかも知れない
  • ゆるい起業のおおざっぱな仕組みはこのようなもの
  • ゆるい起業家の掟は、基本生活費は貯めてから始めろ
  • ふつうの起業は利益第一だけど、ゆるい起業は気楽さ第一、利益は第二に考える
  • ゆるい起業がうまく進むと、退屈なんかしていられなくなる
  • ゆるい起業家は職業というアイデンティティを手に入れることもある
  • ゆるい起業家になるのなら、嫌なことは絶対にしてはいけない
  • ゆるい起業でもまったく儲からない事業は、名誉ある撤退を
  • ゆるい起業の本業であまり儲からないなら、副業せよ
  • 文筆と株式トレード組み合わせでのゆるい起業の実際の手順
  • ブログだけではなく、メルマガ、電子出版、まとめなどで稼ぐことも忘れないように
  • マネキン業と文筆業を組み合わせたゆるい起業もできます
  • 無償奉仕の仕事でも、ゆるい起業の取材として活用できる
  • 稼ぐことと仕事を切り離してしまい、気持ち晴れ晴れする方法
  • 本業はネット起業にした方がいいこれだけの理由 最大のメリットはポータビリティー
  • 商売のプロセスに自分自身が入らなくてもいいビジネスが楽
  • 稼いだお金はビジネス資金に全部使い、残る分は全部遊びに使ってしまえ
  • ゆるい起業のネタは、会社経験よりも、少年時代の経験に隠れている
  • 年収30万円で何ができ、株の臨時収入も有った年には何ができる
  • ゆるい起業家の一日「自宅に居るとき」編
  • ゆるい起業家の一日「海外旅行中」編
  • ゆるい起業を始めるときの仕事の規模感とは
  • ゆるい起業を始めるための、個人プロジェクトの歩き方
  • ゆるい起業のために在職中から始めたい副業は
  • ゆるい起業のゆるさゆえの落とし穴
  • たとえ納戸の中でもいい、ゆるい起業もオフィスが欲しい
  • あとがき
  • 本書籍の著作権と免責事項について

ゆるい起業は、明るい未来のアイデアかも知れない

 世間一般にゆるい起業という言葉が定着しているわけではありません。しかし今までも主に会社を定年退職して自由な時間を持ち、生活資金にも余裕がある人が自身の趣味と実益を兼ねて生き甲斐づくりのために身の丈に合った自分のビジネスを始める、という考え方がありました。

 仕事を通じて世の中に貢献したいとか、暇を持て余したくないなど、定年退職後に起業したい欲求が有ったとしても、年齢は既に60歳だから、あまり長時間の仕事やストレスのかかる仕事はしたくないと考えることは無理もないことでしょう。しかも会社から既に支給された退職金やこれから受け取るであろう公的年金があることから、もうそれだけで生活に困ることは無いし、その上無理して働かなくても済む楽しい仕事でお金を稼ぐことはできないものか。そう考えることは合理的です。

 一方、公的年金の支給額は会社員時代の年収レベルと比べて少ないことも事実です。だからこれからは今までのように贅沢はできない。遊びも制限を受けるでしょう。多くの人にとってある程度の貯えがあったとしても、せっかく貯めた預貯金が会社を辞めたのを境に毎年減り続けるのを座して眺めていることは心配が高まるでしょう。

 それならば、せめて自分のお小遣いぐらいは自分で稼いて行こう、お小遣いは生活費に比べると大した額は要らないから、自分の好きなことを誰にも口を挟まれずに好きなやり方で楽しくお金を稼いで行こう。私はそう考え始め、実際に8年前から個人事業での起業に取り組みました。

 それから8年経った今のビジネスからの収入は、毎年ほぼ30万円です。しかし欲も出て年収100万円になれればいいなあと、毎日工夫を重ねながらネットを中心に、やりたいことでお金が稼げる小さなビジネスを続けています。そのおかげで会社を辞めて8年間の毎日が暇だと感じた日がありません。まったく一人のビジネスで、収入は全て自分の小遣いになるから生活を支える切迫感がありません。

 幸い年収30万円が毎年手に入るようになったため、その範囲で何でも自由にお金を使うことができます。これから受け取る少ない額の公的年金から無理言ってお小遣いをもらうことが無い仕組みを手に入れました。私は特に年金受給世代の人にも少しでいいから仕事をして収入が毎年ある暮らしが大切ではないかと思っています。自分の手で収入が作れたら、自信が持て、遠慮せずに毎日楽しく暮らして行ける。そう思いまして、今まで8年のゆるい起業の経験を、とりあえずここにまとめてみることにしました。

ゆるい起業のおおざっぱな仕組みはこのようなもの

 ゆるい起業がどのようなものであるか、イメージを読者の方々に持ってもらえるように書いてみました。

 会社員の夫を持つモデル夫婦の年金は月約23万円程度なのだそうです。年間にしたら276万円。ちなみに私は51歳で会社生活を終えていますから夫婦の年金合計は約240万円です。まずこの年金だけで貧しくないふつうの暮らしができる基本生活費をチューニングします。例えば大きな車を小さな車にするとか、不要な保険を解約するなどです。それからいざというときの出費は年金以外の貯えで賄うことにします。大雑把ですが、これで年金以外の収入が無くても私は生活できます。

 これができたら、お小遣い稼ぎだけを目的にゆるい起業を始めます。大事なことは上述した普段の生活に必要な基本生活費にゆるい起業からの収入が混じらないようにすることです。もし儲かったお金を普段の生活費に混ぜてしまったら、生活はたちまち贅沢になり、一旦贅沢になった暮らしはなかなか質素に戻せないから、こうなったらもはやゆるい起業はできません。必死に辛い仕事でもやって行かなければならなくなるからです。

 従って自分年間でいくら稼げば自分は納得できるのか、そこから年収の夢を描くといいと思います。私の場合は年間30万円ぐらいあれば、一応は自分がしたいことをして、買いたいものが買えますから、これを上回る収益を1年間で出せばよいことになります。

 一方、何で起業するかを決めることが要ります。ここで見栄を張るとゆるく起業できませんから、自分の好きなこと、あるいは得意なことで気楽にできる仕事をネタに儲かる仕組みを考えます。儲かる仕組みと言うと難しいと思うかも知れませんが、ネットの世界では既にいくつも無料で開始できるお金を儲ける仕組みがあります。例えばネット通販のアマゾンや楽天市場の広告を自分で作ったサイトに貼るというものが一番簡単で手っ取り早く開始できる儲かる仕組みのでしょう。他にもオークションサイトやフリマサイトなど物販で儲ける仕組みもあります。

 ただ、いくら始めるのが簡単でも、いきなり納得いく儲けは出て来ません。上達するまでにはそれなりの年月がかかります。あまり稼げないなら、お金をなるべく使わないでその分で自分のビジネスを磨くことを考え続けたらいいのです。これは好きなことでしかできない仕事のやり方でしょう。今までの現役時代には許されなかった自分のための自分の仕事だから、儲からなくても好きだからやって行ける。こんなビジネスネタで始めることがゆるい起業の仕組みには必要です。
大庭夏男
作家:大庭夏男
趣味じゃない生業でもない「ゆるい起業」
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