小説の未来(12)

概念の熟成

 

 私の作品は基礎概念の表現と述べてきましたが、この基礎概念を作品の創造に使いこなせるまでに、かれこれ約40年という月日を要しました。我ながら、基礎概念の熟成にかなりの時間を要したものだと思いますが、頭脳の歴史と思い納得しています。

 

 中学校1年生のころ、下校途中で両側のガードのない橋の上を歩いていたときに、ふと頭に浮かんだ“物質とはなにか?”と疑問に思ったことが、基礎概念の発端になったのではないかと思います。

 

すべての物質に共通するものがあるのではないか?いかなる物質も運動しているのではないか?物質もエネルギー形態の一つではないか?非物質はあるのだろうか?宇宙は物質なのか?宇宙の外部は存在するのか?宇宙は膨張しているのか?なぜ、生と死は存在するのか?そのような疑問が脳内を駆け巡り、それらとのかかわりとともに基礎概念が熟成されていったような気がします。

 

小説を書き始めたのは、高校生からでしたが、基礎概念を踏まえた作品を書けるようになったのは、50歳を過ぎてからのように思います。基礎概念の長い熟成が、現在の作品を作り上げていると思えてなりません。

 

文学界の歴史において、才能ある作家が素晴らしい文学作品を世に送り出してきました。幸いにも私は彼らの作品を参考にさせていただきましたが、私の作品は文学作品の域には達していないでしょう。それでも、これから小説家を志す若者に、多少なりとも私の基礎概念が参考になればと思っています。

 

基礎概念の応用

 

 そんなに基礎概念にこだわるのであれば、小説以外にも応用できるのではないか?とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。あくまでも個人的な考えですが、私の基礎概念は、芸術、科学、スポーツ、経済、政治などのあらゆる分野においても応用できるものと考えています。特に天然資源である脳の有効利用に役立つと確信しています。

 

 今後も、人間の脳の考察において、個人と社会の両側面から基礎概念の応用を試みていきたいと思っています。時々、擬人化された動物が登場しますが、これは、動物の脳と人間の脳の共通する点や相違する点を考察しています。

 

突然の死というものが存在する限り、いつまで小説を書き続けられるかわかりませんが、自作品は、物質である人間が、将来にわたり、生と死という存在形態の変化をどのように考えていくのかを考察するものでもあります。

 

まったくのんきな話ですが、将来、この基礎概念が役に立ったと言っていただける読者が現れることを願っています。今後も知能と健康が続く限り、のんびりと小説を書き続けることで、基礎概念を表現していきたいと思っています。

 

私の話は分かりにくかったと思いますが、少しでも参考にしていただけたら幸いです。また、今まで自作品を読んでいただいた読者の方に心より感謝申し上げます。

 

春日信彦
作家:春日信彦
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